コラム


by katorishu
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歴史ほど面白いものはないのに

 11月16日(木)
■脚本アーカイブズの当番。アルバイトが二人いて脚本・台本の書誌情報をパソコンに打ち込む作業をしている。その二人に「関東軍て知っている?」と質問したところ、「知らない」という答え。一人は放送作家志望の39歳の男性。一人は20代前半の男性。満州については聞いたことがあるということであったが、歴史についての基礎知識がすくなすぎると改めて思ったことだった。

■39歳氏は受験科目に地理を選択したので、日本史は選択しなかったという。で、昭和史についての基礎知識が少なく、太平洋戦争がなぜ起きたのかについても、よくわかっていない。関東軍の存在は昭和史で大きな比重をしめている。陸軍省も政府も制御できずに暴走し、日中戦争を拡大し、泥沼にのめりこむきっかけを作った。その結果、米英の権益と衝突し、経済封鎖にあって追いつめられ、座して死を待つより突撃……とばかりに真珠湾奇襲を実行したのである。関東軍の暴走がなかったら、少なくとも日米戦争は起こらなかったであろう。

■多少でも昭和史を勉強し、昭和史にからむ人物のノンフィクションを数冊書いたので、ぼくなりに勉強し、今も勉強している。来年、総合雑誌に連載するノンフィクションも昭和前期に日米のはざまで生きた人物をあつかう。いろいろな調べ物をして改めて思うのだが、昭和史ほど面白いものはない。この時期の日本人は人間の愚かさも賢さも、どうしようもなさも可憐さも、もろもろすべてひっくるめて、人間存在の不可思議さ、面妖さを、極めてわかりやすく「表現」している。ドラマの宝庫であり、人間研究の材料に事欠かない。

■二人のアルバイトに20分ほど、歴史を学ぶことがいかに重要であり、面白いかを「講義」した。恐らく二人の脳裏の片隅に残ったのではないか。二人とも調子よく生きるタイプではなく、どちらかといえば愚直で不器用な青年で、真摯に耳を傾けていた。
 歴史とは言語によってつづられるものであることも、力説した。お説教好きの、お節介なオッサンと思われたかもしれないが、次の世代に伝えていかなければならないことである。

■帰宅してテレビを見ると、またも大人の愚行の数々。教育委員会の面々が深く頭をさげて謝る図とか、豚肉にからんで130億をこえる脱税で逮捕された食肉業者等々。いずれも社会のリーダークラスが、このていたらくである。脱税業者が安倍首相の事務所に政治献金していたとかと報じられていた。「美しい国」を声高にいう総理の足下には、金銭の問題、カルト宗教との関係などいろいろ「美しくない」事柄がごろごろ転がっている。週刊誌が報じていることだ。大手マスコミは報じていないが、事実はどうなのか。根も葉もないのであったら、週刊誌などを告訴したらいい。

■伝統に対して敬意をはらったり、モラルを守る……という点では、安倍首相の言い分にまったく賛成だが、国が祖国愛や郷土愛を押しつけるのは問題である。郷土愛などそこに住む大人たちがまっとうな生活をしていれば、自然に生まれるものである。
by katorishu | 2006-11-16 23:31