コラム


by katorishu
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街が仕事、取材の場

 11月19日(日)
■季節の変わり目なのだろう、体調を壊している人が多い。舌の口内炎がようやく治りかけた。比較的ぐっすり眠れたので脳の調子は良く、本を斜め読みしても内容が頭にはいってくる。第一、文字がはっきり浮き上がるように見える。こういうとき、外を歩くといいのだが、あいにくの雨。一日中降り続いた。もっとも午前中、眠っていたので、雨であったかどうかわからないが。

■何かいい話、明るい話はないかなと考えたが、どうも思い浮かばない。厭な話、胸が悪くなるような話、怒りたくなる話なら、いくらでもあるのに。
 テレビをつける。新聞を開く。パソコンでウエブ上のニュースに目を通す。よくも日々、こんな「悪」が展開されているもの、と嘆息する。記事にもならない日常生活での「小さな悪」や「ミス」「誤解」「嫉妬」……等々は、人間なのだから誰でも日々体験しているであろうし、こういうのは生きる上の「味付け」として、むしろ必要な要素なのだが、一応ニュースとなる「悪」となると、そうはいかない。場合によっては人の命が失われる。

■本日は一日中家にいようと思ったが、レンタルビデオ店で映画のDVDを借りがてら雨の中を外出(どうも動かないと調子が悪いのです。そういえば子供のころ、落ち着きがないとよくいわれました)。駅近くのミスタードーナッツでコーヒーを何杯も飲みつつ3時間半ほど執筆、資料読み。隣の席の女性三人も長居していて、話が聞こえてくる。30歳前後か。書店の店員か図書館関係者のようで、岩波文庫がどうのこうのとか、本の棚のことなど話していた。別に盗み聞くつもりはないのだが、聞こえてしまう。どんな家庭を築いて子供を育てていくかなど、きわめてまっとうな話だった。こういう店で長時間過ごす人間だからなのか、堅実で地に足がついているという印象だ。こういう若者(でもないか)も数多くいるのである。ややホッとした。

■マスコミや映画、舞台関係者と会って話をすると、どうしてもアルコールがはいる。アルコールなしでは話をする意味がないと思いこんでいる人もいる。確かにアルコールがはいると抑制がとれ話が弾むし、ぼくも嫌いではないが、アルコールの作用でつい気持ちが大きくなったり、日ごろ抑えていたものが浮き上がったりして、つまらない軋轢を残したりする。

■イスラム国家にアルコールはないが、それでも彼らは熱く語り合っている。もっとも男女の別が厳しく、男同士に限られているケースが多い。ただ、同じイスラム国家でも国により違いがある。以前、取材をしたインドネシア出身の某大学教授の女性は、ジャカルタではかなりアバウトのようなことを話していた。彼女はイスラム教徒だが、キリスト教徒のアメリカ人と結婚していて、「それで問題ないのですか」とぼくがきくと、「ありません。わたしはアラーの神に祈りをささげ、彼はイエスキリスト。同じ家の中ですが。ただ、子供たちは戸惑うでしょうね。わたしは適当なので、一日5回のお祈りははぶくことがありますが」といって笑った。

■夫婦とも「原理主義者」でないのがいいのかもしれない。ひとつの信条、価値観に凝り固まった人間というのも困ったものだ。ところが、世界的にそんな「原理主義者」が増えている。宗教ばかりでなく「金銭原理主義者」「右翼原理主義者」「左翼原理主義者」などもいます。いずれにしても「原理主義者」はあまり付き合いたくない相手です。

■友人の脚本家、冨川元史さんが最近、以下の著書をだしました。映画『赤い鯨と白い蛇』の原作本のようですが、いわゆる「ノベライズ」の作ではなく、冨川さんの言葉では事実上の「処女作」ということです。冨川さんは脚本に対して熱い思いをもっている人です。一読をおすすめします。11月25日より来年3月まで岩波ホールで上映されます。地方でも順次上映されるとのこと。かつて住んでいた古い民家で、偶然であった「五世代の女たち」の物語とのことで、香川京子主演。いずれ見ようと思っています。
by katorishu | 2006-11-20 00:23