コラム


by katorishu
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善と悪は紙一重

11月20日(月)
■昨日、一日雨が降り続いたので本日は秋晴れの天気に恵まれるかと思ったが、期待は外れ、じめじめと湿った天気だった。そうでなくとも鬱陶しいことが多いのに、早く秋晴れの空をのぞみたいもの。ボランティア活動の件で一日の大半はつぶれる。某所で興味深いことを聞いた。韓国情勢のことだが、物事には光があると必ず影があるものとあらためて実感する。文化面にも政治や宗教がはいりこんでおり、「なるほど」と合点したことだった。

■裏がとれないので安易に記すわけにはいかないが。物事の「本質」や「真実」は、案外深いところに隠れていて見えてこないものだ。日米戦争に日本がつきすすんでいく経緯について仕事の関係で文献を調べているが、「旧左翼」や「右翼」がいっている状況とは、かなり違う側面がいろいろあり、もう少し時間が経過してみないと「真実」はわからない。日本の公文書でも未公開のものが相当あるし、まして一党独裁の中国は未公開文書だらけである。将来、共産党一党独裁が崩れるとき、興味深い資料がぞくぞくと出てくるはずだ。

■欧米列強の植民地主義が猛威をふるっていた当時の情勢を考慮にいれないと、なぜ日本が満州に侵出したか、本当のところはわからない。旧ソ連のコミンテルンが背後で戦争を煽っていた可能性も強く、あれやこれや、政治や経済情勢が複雑にからみあって、日本が「戦争に追い込まれた」という側面も否定できない。だからといって侵略の事実を否定することはできないが。日米戦については「追い込まれた」という側面が強い。そうして中国の主張している「歴史認識」は多分に「政治キャンペーン」の要素が強い。清朝が倒れ辛亥革命で中華民国ができたころの中国は、馬賊が跳梁跋扈しコミンテルンや欧米列強が複雑にからみあってしのぎを削っており、じつに複雑怪奇な情勢である。

■何をいいたいかというと、時間の経過とともに、一見して「善」に見えたことが「悪」に、「悪」に見えたことが「善」に転化することは、歴史上いくらでもあるということである。最近、子供の自殺がしばしば報道されているが、自殺をしかねない人間に対する周囲の対応の仕方も微妙である。世間常識に従い「励ます」ことが、結果として自殺を「後押し」することになることは、専門家などからしばしば指摘されていることだ。「がんばれ」とか「われわれがついている」「しっかり」などという声援は、一般的に「思いやり」があり、「友情」があり「愛情」があるとみなされる。なにしろ、その人のことを思って励ますのだから、励ましをあたえる人は「良いこと」をしていると思っている。それが、自殺へと追いやる「きっかけ」になるという皮肉。励ましを与えた人は自分の鈍感さに気づかないのである。

■われわれは自分の気づかないところで日々、「善意の刃」をふるっているのではないか。このこと頭の隅おいておいたほうがいい。じっさい、「自分は正しく清いことをやっている」という「善意の持ち主」ほど、始末におえないものはない。自分は正しいこと、正義を行っているという意識があるので、そういう人に限って自分の言動に対して「反省」がない。

■人間はどんな高潔で清廉潔白な人間でも、過ちを犯すもの。過ちを改めるにためらうなかれ、というが、自分が絶対的に正しく清いことをやっていると意識している人間は、過ちを決して認めようとしない。なにしろ、「正しいこと」をやっていると思いこんでいるのだから。個人のレベルでも、この種の人間は困った存在だが、その種の人間が権力をもってしまうと、一層始末が悪く被害も甚大になる。

■悲しいことに、大衆(マス)というのものは、「俺は絶対的に正しい、ついてこい」という勇ましく一見強そうな人間になびくものである。人を組織や国におきかえてもいい。あなたの周囲を見回してみてください。必ず一人や二人、「自分は絶対正しい」と思いこんでいる人がいるのではないですか。おうおうにして、その類の人がリーダーになるものです。
by katorishu | 2006-11-20 23:43