コラム


by katorishu
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若者を中心にテレビ離れが進んでいる 

11月27日(月)
■20代男性の1週間のテレビ視聴時間はどのくらいだと思いますか?3時間という調査結果がでたというのである。1週間である。7で割ると1日30分足らず。それではどの世代がもっともテレビを見ているかというと、70代以上である。この世代は1日の視聴時間が10時間だという。某放送関係者の話であり、どの程度信頼できるかわからないが。

■あるいはウエブ上の調査で得たデータかもしれない。通例、新聞などの世論調査とウエブ上の調査では相当の開きがでるし、ウエブ上の調査が統計的にどの程度信頼性があるかどうかわからない。ただ、ひとつの目安にはなる。
 ぼくが接する若者を見る限りでは、確かにテレビ離れが若者を中心に進んでおり、長時間見ているのは老人ばかり。これが事実だとすると、テレビや広告関係者にとって衝撃である。

■その時代、時代のもっとも「おいしい部分」をつまんで急成長してきた地上波テレビも、経営的に大きな壁につきあたりつつあるということである。ある時期からタイタニック号化した船にのっていたのに、これまで気づかなかったということだろう。今も気づかない関係者がいるようだが、すでに世間の風向きは変わっている。このへんで大きくカジを切らないと……結果は明らかである。

■ただ、テレビ離れが良いことなのか悪いことなのか、簡単にはいえることでもない。テレビを見ていた時間が携帯やインターネットやテレビゲームにかわっただけだというのなら、あまり感心しない。五感をつかうことに、もっと時間とエネルギーをさくことが必要だろう。そして脳の力を鍛えるのなら、毎度いっているように読書である。

■テレビ離れが進むと、活字離れ以上に深刻な事態が今後生ずるこになる。視聴者が離れればスポンサーが離れる。すると、なにが起きるかといえば、流れるオカネが減る。予算の急減の影響の大きさは活字の世界どころではない。良書を個人で出すことだってできるし、資本も経費も少ない小規模の出版社が、意味や意義のある本をだし続けている例はいくらでもある。ところが、映画もふくめ映像制作の場合、厖大なオカネがかかるという宿命をもっている。

■作品にかけるオカネが削減されれば、なにより良い作品を創るために大切な要素である「時間」をかけることがむずかしくなる。ドラマの場合であったら、良い脚本がそろわない。良い役者を使えない。セットなども貧弱になり、ロケも限られ、当然、内容もお粗末で、安直になる。こうなると「劣化の連鎖現象」で、必然的に「時間」と「オカネ」のかからないお手軽番組のオンパレードになる。この数年、すでにその傾向が強くでてきているのは、テレビをよく見る人が一様にあげる声である。

■それでも、1日に3,4時間以上テレビを見ている人の数は膨大であり、テレビは消費行動ばかりでなく、選挙での投票行動にまで強い影響をあたえている。一般にテレビをよく見る層ほど本を読まないし、情緒的な反応をする。テレビを仕掛ける側から見れば「あつかいやすい」対象である。そのため、この層のとりこみに企業も政治家も今なお必死である。ニュースのエンターテインメント化など、その傾向の端的な表れである。

■インターネットはまだ出来たばかりで、ブログなどの情報発信が今後、人々の精神にどういう影響をあたえていくのか、わからない。善し悪しはともかく、インターネットというメディアができ、普及している事実は否定しようがない。利点も数々あるので、期待感もあるが、金太郎飴のような画一的な価値観を醸成する方向に堕する恐れもある。現に「個性的」という名の「非個性(画一)的」価値観が日本列島をおおいつつある。多様な価値観を許容し、異なった文化や価値観をもつ者が違いを認め尊重し共生していく……それこそ21世紀の価値だと思うのですが、事態はどうも逆の方向にいっているようです。
by katorishu | 2006-11-27 23:45