コラム


by katorishu
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

戦前と戦後は相当部分、継続していることが、古い雑誌でわかる

 11月28日(火)
■国会図書館で調べ物をした。昭和初年の「婦人公論」や「キング」など。戦前は「暗黒時代」であったと「戦後教育」では教えられてきた。一方、戦後はアメリカの「民主主義」のおかげで明るく豊かになった……と思いこまされてきたが、大正から昭和初期の雑誌類を読むと、今と類似している点が多いことに驚く。

■日本の文化、社会は、じつは「敗戦」によって切れてはいなかったということを、「婦人公論」などの雑誌を読むとわかる。もちろん、戦前は政治面、思想面では厳しく、とくに左翼関係者には「暗黒」でしかなかったであろうが、普通の庶民、生活人にとっては、悩みも喜びも悲しみも、今とそれほどへだたっていない。人々の好みの分野も今と同じで、グラビアなどにはハリウッドスターがよく登場し、モダンなもの、新規なもの、欧米のものへの憧れが強い。

■不良の女学生なども結構多く、何人かのグループが数人の少年を性的にもてあそんだり、「援助交際」という言葉こそなかったが、それに類することをする制服の女学生もいて、それをジャーナリズムが報じると、それでまた真似するものがでる。いまの「イジメ」の流行と同じである。年少者の自殺をジャーナリズムが報じることで、さらに自殺者の連鎖を産む。従って「ジャーナリズムが人を殺している」といった説を唱える識者もいた。
日中戦争が泥沼化する昭和10年代になると、「軍国主義」が強くでてきて、真珠湾以降は「総力戦体制」なので、新聞雑誌も厳しく統制され実情を伝えていないが。すくなくとも昭和一桁までの日本は、封建的遺制が残っているものの、かなりまともだった。(もっとも東北地方の惨状は別で、「婦人公論」であつかう対象は、多くが大都会であるようだが)

■最近、ケーブルテレビのナショナル・ゲオグラフィックやアニマル・プラネットなど動物の記録映像をよく見るが、動物の最大の関心は「食」と「性」である。いずれも種を維持していくために必須のもので、このふたつへの欲求、つまり本能だが、そのためにすべてを尽くす。それが「生きる」ということで、なんの虚飾もてらいもない。
 人間もこういう動物の縁戚なのである。今も昔も「いかに食べ」「いかに繁殖するか」が「人」の最大の関心事である。動物とちがって本能的な欲望を巧妙に包み隠す術を得ているので、一見、違って見えるが、根っこは同じである。「人は自然界の掟の中で生きる動物の一種」という認識は頭の隅にもっていたほうがいい。

■だからといって、人間が動物のように「弱肉強食」で、欲望を全開させていいというわけではない。逆である。「想像力」と「悪知恵」を獲得してしまったからこそ、欲望も過剰になっている上に、科学文明の発達によってそれまでの自然界ではあり得なかった過剰な力を発揮できる。考えてみれば文明の利器をもった人間は極めて恐ろしく危険な存在である。だからこそ法律やモラルなどで厳しく律していかなければとんでもないことになる。

■古い雑誌をマイクロフィルムやマイクロフィッシュで見ていくと、時間の経過がじつに早い。19時の閉館時間がすぐきてしまう。21時ごろまで開いていてほしいものだ。最近、区立図書館のなかには21時まで開いているところもでている。
 いずれにしても、国会図書館は知識の宝庫であり、日本文化の精髄がぎっしりつまっています。税金で成り立っている施設であるし、なるべく利用したほうがいいですよ。

■国会図書館の建物をでると、向いにライトアップされて国会議事堂が建っていた。ここで国民にさまざまな縛りをかける法律をつくる「先生」たちも、もっと過去の豊かな文化にふれる努力をして欲しいものだ。国会図書館は国会の補完機構としてつくられた施設であり、国会議員は時間に縛られずに利用できる。本日もニュースで報じられた自民党の「郵政民営化」での「復党」問題、ご都合主義もいいところですね。次の選挙まで、このご都合主義を脳の記憶のとどめておき、投票行動に結びつけないといけない。過去の記憶を記録していくことを「アーカイブ」というが、先進国では日本が最も遅れている。 
by katorishu | 2006-11-29 00:23