コラム


by katorishu
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ウイルスをつくる人間はどの面さげたバカか組織か

 11月30日(木)
■脚本アーカイブズの当番。燻蒸の専門家などから話を聞いた。帰路、秋葉原で執筆をしようとヨドバシカメラのビルの一角のコーヒー店で携帯パソコンのスイッチをいれた。ヨドバシカメラのビルの中なので、いろいろな無線ランの電波が飛び交っている。この界隈は携帯パソコンでインターネットに接続できる。この方面にきたおりなど、ときおり接続するのだが、本日、接続しようとしたところ、見慣れないネットワーク名があった。どれにつなげても同じかと思って接続したところ、途端にパソコンの動きが鈍くなった。

■おかしいなと思っていると、例えばマイドキュメントをクリックしても画面があらわれない。そのうちフリーズ。バッテリーをはずして強制終了にしたりして、何度か試みるがうまく作動しない。ランに接続したとき、画面下になんといえない厭な感じの文字が10数個見えた。ウイルスかなと一瞬思ったのだが。
 またも、パソコン内の情報が失われる……と思い愕然とした。デルのときで懲りているのでバックアップはある程度とっているものの、朝方、記した原稿はじめバックアップをとっていないファイルが消えてしまう。

■30分ほど悪戦苦闘するうち、なんとか元のように動き出した。ウイルススキャンが作動して、ウイルスを駆除したのかもしれない。どういうメカニズムになっているのかわからないが、他人が困惑し被害をうけるウイルスをつくりインターネット上にのせる人間とは、どういう類のバカなのか。案外、生真面目な人間かもしれない。内心にルサンチマンをかかえている、孤独な青年……というイメージが浮かぶ。新種のウイルスを作成する情熱を、もっと建設的なことに向ければ、多くの人に喜ばれるのに。

■他人の迷惑や困惑、苦しみを見て密かに喜ぶ人は案外多いものである。陰険な性格だが、この種の人間は表面的には案外「良い人」を演じているのかもしれない。
 ウイルス程度ならまだいいが、この種の「科学的知識のある」暗い情熱をもった人間が、核兵器や毒ガス類を密かに開発することも、そのうち現実になるのではないか。多くの人間が困惑し、苦しみもだえる様を喜ぶなど、すでに狂人である。普通人以上に「知力」というか「悪知恵」が働き、表面的には「普通人」を装っているので始末に悪い。

■国家規模で「武器」として攻撃的なウイルスをつくっている組織も、どこかにあるのかもしれない。あらゆる分野でデジタル化がすすみ、便利になったことはなったものの、その分、極めて脆弱な社会になりつつある。悪意の個人や組織が、そのうちインターネットを通じて「とんでもない」不幸を人間社会にもたらす事態も予想される。
 科学文明の発達で、ごく一握りの人間が昔なら何万という軍隊に匹敵する破壊力を手にすることも可能になった。考えてみれば、恐ろしい社会である。デジタル化による便利さの影に大変深刻な問題がある。
 便利さの裏側には必ず危険がひそんでいる。しかし、人間は、ぼくもふくめて横着なもので、いったん手にいれた快適さ便利さは、よほどのことがない限り手放さない。すでに「よほどのこと」が目に前に迫っているというのに。

■50年後、100年後の人類(それまで続くかどうかわからないが)が、振り返って20世紀後半から21世紀前半にかけての「先進国」の姿を見ると、恐らく「異常な時代であった」と思うにちがいない。 
 我々が当たり前でなんら不思議とも異常とも思わないことが、別の時代から見たら異常となることはいくらでもある。例えば煙草。コロンブスがアメリカ大陸を発見した結果、ヨーロッパに持ち帰った「習慣」だというが、煙草がもたらされる前の社会の人は、喫煙は異常と思ったはずである。日本には戦国時代の前後に伝わったようだ。奇異な行為に見られたにちがいないが、それがなぜこれほどまでに広がったのだろう。

■ところで、コロンブスがアメリカ大陸を「発見した」というのも、妙なものだ。そのとき、アメリカ大陸にはすでに人が住んでいたのである。インディアンなど、「人」ではないと思っていた証拠である。昔、中学か高校か忘れたが、アメリカ大陸を発見したのはコロンブスではない……といった類の答えをテストで書いたことがある。恐らくバッテンをつけられたに違いないが。

■今の時代の「常識」は、時代が移れば「異常」になることも実に多い。こういうことも、歴史を学ぶとよくわかる。歴史を読むことの楽しさであり、面白さである。
 電車の中で読む本はだいたい決めているが、今、電車に乗ったとき読んでいるのは、矢野誠一氏の力作『女興行師吉本せい』。一週間ほどで三分の二ほど読んだ。吉本興業をつくりあげた女性の伝記で、この人は「非常識」を「常識」に変えた人である。テレビのお笑いを席捲している今の「吉本興業」にはあまり好感を抱けないが、吉本せいの時代を見る目は大変なものだ。
by katorishu | 2006-12-01 00:54