コラム


by katorishu
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岸田今日子氏と青島幸男氏、亡くなる 

 12月20日(水)
■月一回の定例の日本放送作家協会理事会。活発な議論が展開された。
 終わって事務局の真向かいにあるレストランで何人かとお茶を飲んだ。レアチーズケーキを頼んだのだが、さすが六本木だけあってケーキが800円であった。飲み物は別である。普通の洋菓子店ではケーキセットなどがあって飲み物こみで600円から800円程度である。

■「貧乏暇なし」の生活がつづいているせいか、価格に敏感になる。夕方から、乃木坂のはあとイン乃木坂で、放送作家協会の「放送を考える委員会」主催の「メディアのゴジラ講座」にお客として参加。今回は年末ということもあって「美しい言葉と音楽とクリスマスの夕」というタイトルの催し。

■フリーの女性アナウンサーでつくっている「朗読セラピー・スイミイ」というところのアナウンサーたちが「ダイヤモンドより平和が欲しい・子供兵士ムリアの告白」と「世界が100人の村だったら」を朗読した。前者はアフリカシエラレオネでの内戦に参加した「子供兵士」のドキュメンタリー構成を朗読用に舞台化したもの。後者はベストセラーになった本からの抜粋である。感動して涙ぼろぼろのお客さんもいた。

■中間に脚本・台本作家3人のトーク。「子供の自殺とテレビ報道」というテーマで、ドラマ作家の竹山洋氏、東多江子氏、と構成作家の田中格氏がパネリスト。竹山氏がテレビにかかわって30余年の体験をもとに、「悪貨が良貨を駆逐する」というグレシャムの法則が今のテレビ界にあてはまると語り、また田中氏がみずからが担当しているワイドショーの裏側に触れ、テレビは「わかりやすく」を心がけ、物事を単純化させ「白か黒か」をキャスターまでが感情的に語るようになったものの、かえって複雑微妙な社会を「写さない鏡」になっているのでは――と疑問を口にしたり、興味深い内容だった。メディアを批判的に読み聞くメディアリテラシーの問題である。このコーナーは40分であったが、90分ぐらいかけて再度やってもらいたいものだ。

■すべて終わって帰ろうとしたが、美食家のドラマ作家の津川氏が六本木警察の正面にある居酒屋のサービス券があるから、ちょっといかないかということで、つきあうことになる。市川理事長なども加わり、8人ほどで鍋料理を囲んだ。我々と同業の放送作家でもあった青島幸男氏が亡くなった。また、ユニークな俳優の岸田今日子氏が亡くなった。お二人とも今の時代では「若い」のに惜しまれる。このことも話題になった。つかこうへいの舞台に主演した岸田今日子の熱演はぼくの脳裏に深く刻みこまれている。つか氏が岸田今日子のために書き下ろした作品で、タイトルに「今日子」という言葉があったと記憶している。

■そういえば岸田さんの元夫の仲谷昇氏も数ヶ月前に亡くなった。二人が主演した舞台を30数年前に新宿の紀伊国屋ホールで見ている。そのときは夫婦であったのかどうか、イキのあった台詞のやりとりが印象に残っている。最後に岸田さんの舞台を見たのは4、5年前、俳優座で演じた一人芝居だった。タイトルは忘れたが、終了後、楽屋を訪れ拙作『モダンガール』を手渡したりした。読書家の岸田さんにぜひ読んでもらいたいと思ったのだろう。1分ほど話しただけであったが、憂いを帯びた知的な風貌は今も記憶に残っている。合掌。
by katorishu | 2006-12-21 06:29