コラム


by katorishu
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環境との調和こそ21世紀の課題 

12月22日(金)
■この秋、北千住に東京芸大音楽学部の音楽環境創造科が新たに誕生した。地元に密着して、音楽表現を通じて新たな文化を創造していこうとするユニークな学科である。そこのK助教授に脚本アーカイブズの委員として接触。K助教授はフランスに留学し、文化的イベントをたちあげる術をまなんだとのことで、いろいろ建設的な提言を頂戴した。この国の政治家は芸術や文化に無理解な人が多く、それでいて「文化大国」などとのたまっている。箱物つくりに邁進するのではなく、「中味」を充実させることこそ長期的に見れば日本の「国益」になるのだということを知ってもらいたいものだ。

■校舎の並びにユニークな喫茶店がある。コヤガーデンという店で、ライブやフラメンコの実演を時折やっているという。江戸時代から千住に住んでいる一家が経営している店だ。以前は陶器屋をやっていたとのことで、コーヒーカップも多彩で凝っている。それほど広い店ではないが、落ち着ける。北千住には喫茶店が少ないと思っていたが、店主の話ではいろいろとあるそうだ。

■文化的に辺境といわれていた足立区は今大きくかわろうとしている。都内一の「貧困地域」などともいわれているが、案外、こういうところから新しい文化が生まれるのかもしれない。新しい文化は「辺境」から育つものである。先入観を廃して一度、北千住の街を歩いてみてください。いろいろな発見があります。

■帰路、銀座で89歳になる著名なイラストレーター、早川良雄氏の個展にいったカミサンと会い、鰯料理を売り物の歌舞伎座近くの店にいった。予想していたことだが、かつての味は失われていた。ブランドの名前だけが先行し、濃い味付けしかわからない味覚の人たちが、通う。繊細で微妙な味がわからない人が多くなった。私見では化学調味料の味の素がこの傾向を助長したのだと思う。今や中華料理は味の素多用料理に堕してしまった。味の素がはいっている食べ物でないと「うまい」と思わない人の大量生産は、この国の中央集権的画一化政策と見事照応している。

■文化の豊かさとは多様性であるはずだが、画一化へ画一化へと傾斜していく。テレビもこの傾向を助長した。21世紀の日本が目指すべきは、「物物物の文化」にサヨナラをして文化・芸術面で「すごい」と思われる国である。大量生産、大量消費のアメリカ文化を世界に浸透させたら環境は悪化の一途をたどり、早晩、地上は人間が住めなくなってしまう。
 芸大の音楽環境創造科の目指していることにつながるが、「環境との調和」こそ21世紀の重要課題である。自然を征服し常に敵を作ってこれと戦うことに存在意義を見いだす「キリスト・ユダヤ」の「一神教原理主義」に距離をおくことが、日本の生きる道であると思うのだが。
by katorishu | 2006-12-23 01:25