コラム


by katorishu
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スキャンダルまみれで政権崩壊の兆し

 12月27日(水)
■今年も終わりに近づいたが、政治も社会も週刊誌に格好なネタを提供することばかりが続く。「お坊ちゃん内閣」安倍政権は発足早々にしてスキャンダルまみれである。発足間もなく週刊誌などが「スキャンダル内閣」だと書いていたが現実のことになってしまった。本間税制会長の辞任につづいて、佐田行革担当相の政治資金規正法違反の金銭疑惑がでてきた。架空の事務所に7000万円を振り込んだとのことだが、このカネは「裏社会」に流れたという噂もある。

■佐田氏の実父は佐田建設の経営者で、「土木建築」関係の人物である。そのため、そんな黒い噂が出ているのだが、佐田氏は辞任に追い込また。一方、来年度の国家予算が明らかになりつつあるが、これも問題である。「定率減税の廃止」が盛り込まれたものだが、これは実質的にサラリーマンに対する増税であり、日刊現代によればこれによって国民は1兆1000億円の負担増になる。一方で企業向けには減価償却制度を見直すなどして4000円億円規模の手厚い減税が行われ、さらに雇用保険料の引き下げもするとのこと。

■一言でいえば法人優先で、働く人軽視である。起業の利益が増えれば、賃金もふえ、結果として国民が豊になるという論理だが、この論理はどこかで聞いたことがある。
 お隣の中国では、毛沢東によりメチャクチャになった社会や経済を建て直すため、「改革開放派」のトウショウヘイ総書記が、「先富論」を展開していた。「一部の者が先に富めば、牽引力となって、貧乏な人にもその富がまわり、全体として豊になる」という論理で、これは現在の日本の政府がいっている政策とうり二つである、

■「先富論」のおかげで中国はどうなったか。富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなっているのである。格差の極端なひろがりは現代中国最大の問題であり、今後中国が崩壊するとすれば極端の格差と環境問題が原因となる、と中国通の人たちが一様にいうことである。
「富める者」の大半は現行のシステムをうまく利用し、うまく立ち回った人である。彼らはちょっと富めばさらに富もうとする方向にしか目のいかない人たちで、だからこそ「富めた」のである。

■自分たちだけが富むのでは申し訳ないので、ほかの人に富をまわそう……などという考えは表面上はともかく本音ではもっていない。(松下幸之助などにはそんな理想があったのですが)
 経営者たちは、そんな「きれいごと」を考えていたら「競争」から脱落すると思っている。田中康夫元長野県知事がコラムで書いているが、「情報機器関係で有名な長野県に本社を置く企業は、今世紀初頭に連結決算で1兆3000億円台を達成する一方で、赤字決算を選択した結果として、3年間に亘って法人事業税の支払い額が0円、法人県民税の支払額が年80万円」であるという。

■企業が富み国民が貧しくなる格差社会がますます進むというものである。儲かった企業が税を払うことは社会への貢献となり、世のため人のためになるのだが、そんな気持ちはさらさらないようだ。
 西武電鉄の総帥のからんだ諸々の事業でもそうであったが、システムを利用して悪知恵を働かせ、なんとか税金を払わないよう知恵を絞る。

■やはり、システムがおかしいのである。システムをつくりだすのは「政治」である。その政治を運営する政治家や官僚が腐りきり、汚職が「文化・伝統」と化している中国と、今の日本はあまりかわらなくなっている。中国では、それが長い「伝統」であったので、それなりに機能しているのかもしれないが、日本は物物物、カネカネカネの中国やアメリカとは違う文化伝統をもっている国のはず。

■格差が極端に開いた社会は歴史的に見て崩壊の憂き目にあう。歴史書を読めば一目瞭然の「定理」といってもよい。なのに、権力者たちは書物を読むヒマもないのか、その気がそもそもない坊ちゃん世襲議員が多いのかどうか。安倍政権は「ブレーンがよくない」とはよく耳にすることである。ブレーンにも世襲議員やそれに類する人たちが多く、彼らは「現実」を知らないし「現実」が見えない。

■次の輿論調査で、安倍政権支持率はさらにさがると予想される。それにしても、女性の支持率が高いとは……。政治家は芸能人などと違うのに一種の「人気投票」になり、それが選挙に反映され、政治が動いていく。「見た目」のスマートさや「家柄」などで判断すると大変なことになる、ということに気づかないのか知識がないのか。ブランドものや流行に敏感なのは結構だが、世の深部で進行している事態にも敏感になってほしい。せめて週間現代、週間ポスト、週間文春、週間新潮ぐらいを読んでいたら、「支持」の姿勢もかわるはず。その類の週刊誌は「オジサン」の読むものだと考えているとしたら……ま、そう思っているのでしょうね。自分の周囲1メートルしか見ていない人には、「船」の向こうに見え隠れする「氷山」が見えない。
by katorishu | 2006-12-28 00:52