コラム


by katorishu
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石原真理子が自作本の映画化で「監督」とは

 1月20日(土)
■芸能レポーターの梨本氏がたちあげたインターネットテレビの「梨本テレビ」をたまたま見ていたら、記者会見のシーンが映り、女優の石原真理子が登場した。なんのための会見かと思ったら、最近出版した「ふぞろいの秘密」という本が映画化されることで開いたもののようだった。
 テレビのワイドショーなどで盛んに報道され、本も売れたようなので、わからないこともないが、驚いたのはj監督が石原真理子本人だという。

■恐らく「名前だけ」の監督で話題つくりのためにそうしたのだろうが、商業主義もここまできたかと思った。本では石原真理子が関係した有名男優のことを実名で記し、それが話題になったのだが、映画では玉置浩二以外は実名を一切ださず、フィクション部分が多いと、記者会見でプロデューサーと称する人が語っていた。「石原真理子を一番よく知っているのは本人なので、演出も本人がやったほうがいい」と監督をする理由についてプロデューサー氏は語っていたが。ワケのわからない理屈である。

■一説にはこの本の出版に梨本氏本人が何らかの形でからんでいるといわれ、話題つくりのために仕掛けたのかもしれない。昔から大衆演芸や映画などの世界では、話題つくりの仕掛けは日常的に行われてきたが、男女間の秘密を実名で暴露する本をだすばかりか、映画化しそれを「監督する」とは前代未聞である。石原真理子本人の意志というより、周囲に乗せられたのでは、と思いたくなる。

■「売れるが勝ち」の社会の典型例である。逆に「売る」ためには、羞恥心もなにもかも捨ててしまい、それを良しとする風潮。経済的に追いつめられ、明日をどう生きるかぎりぎりのところで悩んでいる人も多い時代なので、「内情」は深刻なのかもしれない。人は追いつめられれば、生きるためになりふり構わずなんでもするものである。

■窮状にある人は、とにかく生き抜くため明らかに法律違反でなければ何をしてもいい、とぼくは思っている。以前、コンゴの人に取材したことがあるが、コンゴではその日の食に飢えている人は、少々の盗みも許容される、とコンゴでは名門の家の出でインテリのムーゾさんが話していた。
 日本からコンゴに送る荷物の中身ががしばしば盗まれることについて、モラルが欠如しているのでは――というぼくの問いにムーゾさんは一瞬むっとした表情になり、
「飢えに苦しむ人を前にして《盗みはいけない》などというのは、恵まれて飢えを知らない人のいうことです」と反論したのである。なるほどと思い、以後、ぎりぎりに追いつめられた果てに犯す「軽犯罪」は場合によっては許される、と思うようになっている。

■石原真理子のケースには、背後にいろいろの複雑な事情がからんでいるのだろう。そうせざるを得ないぎりぎりの事情があるのか、それとも、ここでひと儲けしようと、本人ないし、周囲の人間が思っているのかどうか。
 内情を知らないので、一概に非難はしないが、「そこまでやるか」と驚いた。

■芸人は「私的なスキャンダル」などで話題をつくるのではなく、芝居などで真価を見せて欲しいものだ。芝居で真価を見せる力量がないから、「まず話題づくり」では寂しすぎる。監督をやるなら、「なるほど石原真理子」と思わせる破天荒な映画をつくってもらいたいものだ。ビートたけしこと北野武がそれまでの日本映画の「文法」を破る映画を監督し世界に存在感を示したように。
by katorishu | 2007-01-21 00:37