コラム


by katorishu
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現代のホームドラマ、『まだ、そんなに老けてはいない』を面白く見た

1月28日(日)
■柳沢厚生労働大臣が松江市で開かれた自民党県議の集会で「15から50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、機械と言うのは何だけど、あとは一人頭で頑張ってもらうしかないと思う」などと述べたという。
 女性を子供を産む「機械」になぞられたことで世論の怒りにあい、柳沢大臣はすぐ打ち消したとのことだが、オッサン大臣の「本音」が思わず口に出てしまったということだろう。例え話としているが、飲み屋などでのザレゴトならともかく、古めかしい価値観が根底になければ公の席で出てくるものではない。

■昔は「子無きは去る」などという言葉もあって、結婚して子供が生まれないと離縁されるようなことも「社会慣習」としてあった。当時はまさに女は「子供を産み増やすこと」が最大の存在価値であった。それと同じ感覚である。産みたくても産めない女性や、不幸にして妊娠しても産む「環境(経済環境他)」にない場合もある。女を「子を産む機械」になぞられるのは、国民を「国を守るための駒」になぞらえる「軍国主義」時代の感覚と重なり合う。

■こういうセンスの人間を国の指導者にいただいているのである。発言は瞬時に世界をかけめぐる。それが「日本の国益」にとってマイナスになることにリーダーとして想像力が及ばないのだろうか。安倍政権にまた「スキャンダル」のタネが増えたということで、政権に対する支持率が更に低下するだろう。まるで、安倍首相の足を引っ張るためにこそ発言しているかのようだ。別の意図があって、そうしたことも考えられなくもないが。

■昨日放送されたテレビドラマ『まだそんなに老けてはいない』(テレビ朝日)をDVD録画で見た。山田太一脚本で深町幸男演出、中村雅俊、余貴美子、岸辺一徳、原田美枝子らが出演。近頃珍しい典型的な「ホームドラマ」で、「団塊の世代」にあたる人達の琴線に触れる要素に満ちた内容。ぼくには極めて面白かった。山田脚本にありがちな「お説教調」の長台詞がなく、説得力があった。
以前は、こういう「大人のドラマ」がいろいろとあったのだが、最近はほとんど制作されない。それだけに一層、新鮮な印象を抱いた。願わくば「数字」もとって欲しいものである。
 若い世代は「まだるっこい」と思うのかどうか。感想など聞いてみたいものだ。

■「団塊ジュニア」あたりを中心に、それ以上の年齢層と以下の年齢層の間に大きな「ジェネレーション・ギャップ」があるようだ。戦前の教育を受けた世代に育てられた世代と、戦後教育によって育てられた世代の価値観の違いが根底にある。後者はアメリカ占領軍の「アメリカ化」政策を強いバックボーンとして持っている。「戦前」は「悪」であり、「戦後」は「善」といった図式が長いこと続いてきたが、最近、ぼくは「どっちもどっち」という気分になっている。

■一口に「戦前」といっても、昭和7,8年ごろから昭和20年にかけての日本社会と、それ以前の大正時代から昭和初期にかけての時代では、かなりの違いがある。それを一口に「戦前」という枠でくくっては、「歴史の真実」が見えてこない。大正後期から昭和初期の新聞、雑誌等を仕事の関係で調べていて感じるのだが、特に都会ではかなり「自由さ」「アバウトさ」があったし、すべて暗黒に塗り込められたいたわけではない。
「昔の一般国民はマイカーもないし電話もないし、海外旅行にもいけないから、可哀想」などといえはしない。現代の「基準」「物差し」だけで価値判断をすると誤りを犯すことになる。
by katorishu | 2007-01-28 23:49