コラム


by katorishu
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情報バラエティの捏造は「底なし」の様相

 1月29日(月)
■「あるある大事典」の捏造事件は底なしの様相を呈してきた。本日発売の「週間朝日」がほかの回の新たな捏造問題を特集しており、他の番組での捏造やそれに準じる「誇大」などが今後表面化する可能性も出てきた。
「健康」にかかわることを厳密な科学的な検証なしで「お笑いエンターテインメント」として取り上げる傾向に問題があるということだろう。「情報バラエティ」として芸人などが「おもしろおかしく」伝えれれば、何でも許されるという風潮が土壌にあった。

■以前、レタスが睡眠に有益という番組が放送されたが、それも捏造であったという。ぼくはその番組を見ていないが、知人から「レタスを食べるとよく眠れる」と聞いて、唯一の持病である「不眠症」をかかえる身として、普段あまり食べないレタスを試みに食べてみたが、まったく効果はなかった。そのときは、店からレタスがなくなるといったことはなかったと記憶する。たまたまカミサンが買っていたレタスを、キャベツ代わりに食べただけのことであったが。

■週間朝日はゴルフ雑誌にいた編集者が編集長になってから、急に面白くなったという気がする。やはり組織は常に「外部の血」をいれたほうが活性化することの具体例だろう。
 いずれにしても、これを機会に、「眉唾の情報」を垂れ流す「情報バラエティ」番組が減ってドラマ枠などが増えることを、脚本家としては期待したいのだが。「安くつくって、なにがなんでも数字をあげる」風潮が根付いている現在、それは「ないものねだり」となるのかもしれない。

■夕方、NHKの「オーディオドラマ懇親会」に途中から出席した。423オーディションルームでFMシアター「ドイツ人が描く『或阿呆の一生』」を聴いた。北ドイツ放送とNHKの合作ドラマで、芥川龍之介の短編を素材に、ドイツ人の脚本家、演出家、出演者がつくりあげた「異色の作品」である。今回は日本向けに日本人の役者が出演し、ドイツ語も残しつつ微妙な構成を施していた。すでに放送した作品なので、聴いた人がいるかもしれない。

■ぼくはもちろん初めて聴く作品であり、実験的な試みとして大変興味深かった。襖の音がページをめくる音の役割をはたしたり、「音」の面白さが横溢している作品だった。ドラマ的な感動というと、もうひとつという印象であったが、試みは買える。
 旧知のラジオドラマ制作のOBの姿もあり、久々に歓談。オーディションルームが満杯の盛況であった。普通の「オーディション」の際はこんなに多くの人が集まることは珍しいとのことである。オーディオドラマは「放送界の良心」といってもいいだろう。アメリカの意向を受けた前総務大臣の竹中平蔵氏が中心になって作成した「改革案」の中にはFM放送をなくすという項目があった。彼ら「拝金教徒」には、「ゼニにならないラジオドラマ」など「なんのメリットもない」ので真っ先に切り捨てるということなのだろう。

■そのあと、懇親パーティが行われた。ラジオドラマ番組の関係者の他、脚本家、作曲家、音響技術者等々、全員がラジオドラマに多大の興味をもっている人たちで、今の放送界(テレビ界)では、「例外的存在」である。逆に「創る」ということに「純な気持ち」を宿している人が多く、地味ながら気持ちの良い懇親パーティだった。
 オーディオドラマは海外でも高く評価され、昨年、数々の賞を受賞したとのこと。パーティの費用はそれら賞の賞金をあてており、「受信料からは出していません」と案内状にしるされてあり、微苦笑した。

■同業の仲間たちと意見や情報交換をしたりするうち、貴重なヒントを得たりする。同業の仲倉氏より、「今度、この監督(故人)についての本を書くといい。傑作をいくつもつくっているのに、本格的にあつかった本がない。関係者を紹介しますよ」と貴重なアドバイスもいただいた。仲倉氏は拙作『今村昌平伝説』が出たとき、ある雑誌に好意的な書評をかいてくれた。某監督の作品はほとんどDVD化されており、見ることができる。すこし時間をかけて調べてみようという気になった。

■去年ドラマ部長になった木田氏とも久々に歓談。26年ほど前、白系ロシア人のプロ野球選手、スタルヒンのことを調べるため一人で旭川にいった。旭川生まれのスタルヒンについてのローカル番組をつくった若手ディレクターがいる、といわれて紹介されたのが木田氏だった。翌年、彼は東京のドラマ部に異動になった。それ以来のつきあいで、「お互い長いね」などと話したことだった。

■独特の投法で人気のあったスタルヒンについては、その後、娘さんが確か「白球に夢をのせて」というタイトルで本をだしたので、ぼくは書くに至らなかったが。我ながらいろんなところへ気軽に飛んでいってネタを仕入れたりしてきたのだな、と改めて思ったことだった。多くは「空振り」で自前の取材費等はムダになってしまうが、得るものも多い。
by katorishu | 2007-01-30 01:14