コラム


by katorishu
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著作権保護がちゃんとされているかいないかで、その国の「文化水準」がわかる

 1月30日(火)
■大井町のブックオフで高杉良と清水一行という「経済小説」のベテラン作家の本をそれぞれ2冊、ほかに経済や流通関連の本を含め計7冊買った。いずれも100円と思っていたら、100円のコーナーとそうでないコーナーの境目が曖昧で4冊は定価の半額であった。閉店間際のレジで値段をいわれて気がつき、「どうしますか」といわれ、仕事に必要なので買った。それでも新刊本で買ったら4,5000円もするものが半額にも満たない。

■仕事で本などを大量に買ったりするので安価なのはありがたいが、書き手としてはあまり歓迎できない。言葉は悪いがブックオフは出版社に「寄生して」業績を拡大しているのである。「読まれてこそ本」であり、図書館などで自分の本が何度も借り出され、少々汚れているのを見るのは嬉しいことではあるが、その結果、出版社の利益が減り、書き手にまわってくる原稿料や印税も減る……というのは「生活者」としてはありがたくない。

■日本映画のビデををひところ図書館で無料で借りて見ることができたが、監督協会からクレームがつき、今では見られなくなっているということだ。お達しが行き渡らないようで、今でも図書館によっては日本映画のビデオやDVDを見ることができるが。
 インターネットが普及し、情報が簡単にコピーされたり、ダウンロードされるようになって、「著作権」の侵害が飛躍的に多くなった。

■以前は「著作権」という概念が薄く、創作者への還元など微々たるものであったが、近年、日本ではかなりの程度「著作権」の権利が定着した。去年、釜山の東アジアドラマ作家会議に参加したとき聞いたのだが、中国では相変わらず映画やテレビドラマの「海賊版」が横行しており、たとえば中国で見ることの出来る「韓流ドラマ」の9割は「海賊版」ないし不法コピーの作品であると韓国の関係者から聞いた。

■東南アジアなどでも著作権に違反した作品が多量に出回っている。中国は世界貿易機関にはいったのだし、著作権の面できちっとして欲しいものだ。その点、アメリカはさすがに著作権がしっかりしており、ディズニーの作品やキャラクターなど「著作権が過剰」といえるほどである。インターネット時代となり、著作権ビジネスも巨額な利潤を生み出すようになり、投資家などがこの分野はカネになるとして虎視眈々と狙っているので、ますます著作権関連は発展するだろう。現場でもっとも汗を流して苦吟している作り手に還元される方向で処理されるといいのだが。
 著作権の保護がしっかりなされているか、いないかで、その国の「文化水準」がわかるというものである。

■例えばテレビドラマを例にとると、日本の現状では再放送になった場合、脚本家に支払われる脚本料は数千円から1万円程度である。これが「局制作」の作品をキー局が流すと、制作時の脚本料の2分の1が支払われる。(以前はそうであった。現状については未確認)同じドラマでも下請けの制作会社と局制作では、再放送で受け取る金額が2桁も違うのである。(ぼくの場合、なぜか局制作の作品の再放送はごく稀で、ときどき再放送される「昔のドラマ」は下請けの制作会社制作のドラマばかり。かくて「実入り」が少なく、おかげで「清貧」の生活が出来ているのだが)

■ところで、何事もカネがなくては動かない時代、映像産業にいろいろな資金が流れ込むのは結構なことだが、「ビジネスになる」作品ばかりが氾濫し、利潤をあげられそうにない佳品が排除されるとしたら、これも歓迎すべきことではない。受け手、消費者の問題でもある。「みんなが見る」作品や「話題作」を見るのも結構だが、「みんなが見ていない」作品を見るほうが、個性的であるし、いかにも「自分らしい」感性を養えると思うのだが。

■本も同様である。ベストセラーばかりを読んでいたら、思考も感性も「金太郎飴」になってしまう。「話題作」「ベストセラー」などと遠いところで仕事をしている「売れない作家」の「犬の遠吠え」と思われてしまうかもしれないが、「地味な作」「地味な本」には案外、深い感動や感銘が宿っているものです。
 それを独自に「発見すること」の楽しさ、喜びもあると思うのです。話題作、ベストセラーには「発見の喜び」がありません。
by katorishu | 2007-01-31 02:55