全編二人の男女の会話でつづる異色の映画、『カンバセーションズ』
2007年 02月 20日
■昨日の川柳句会について。前もって「兼題」として「鮒」「冬」「深い」「蓋」「福」の五つの題がでて、これはそれぞれ2句つくっていく。当日、会場で出るのは「席題」で、この日は「ペア」「減る」「別」「下手」「蛇」の五つ。「席題」は3時間以内にそれぞれ2句つくる。俳句だと割にすんなりでるのだが、ひねりを聞かせる川柳はむずかしい。しかも、そこに「人生」と「おかしみ」がはいる必要があるので、かなり苦しむ。ベテランたちの句は、さすがと思わせるもので、「プロの芸」といってもいいものが多い。
■新参者のぼくの句で選ばれたのは2句。「鮒」の題で《甘露煮の入れ歯に触る鮒の骨》と「ペア」の題で《質流れペアの時計の主いずこ》という句。自分でもあまり感心しないもので、もちろん「特席」とはほど遠い。自分としては「蓋」の題の《瓶の蓋これで喧嘩が出来たころ》がいいと思っていたのだが。この題の選者や女性であったので、「少年の日の思い出への懐旧をうたった心情」をくまれなかったのか。しばしば「特選」に選ばれるカミサンによれば「瓶の蓋」という表現が「蓋」からくるイメージとして平凡なので、それで落ちたのではないかとのこと。川柳には「ひねり」「意外性」が大事なことのようだ。もっとも江戸川柳の流れをくむものもあってこれは物差しが違う。横浜での句会は時実新子川柳の流れである。
■各題とも40前後の句のなかから5~8句ほどが選ばれ、さらにその中から次席の「止め句」と「特席」が選ばれるのである。この日はNHK一都六県の若手女性ティレクター3人が「取材」を兼ねて出席していた。その一人からNHK内の「内部事情」について興味深いことを聞いた。
■本日、ドラマ企画の件で番組制作会社のプロデューサーと新宿で打ち合わせ。プロデューサー氏は最近、韓国ドラマを集中的に見たが「台詞が素晴らしいので驚いた。日本のドラマは向こうから学ぶ必要がある」とのこと。
一時の「韓流ブーム」は去ったようだが、韓国ドラマから学ぶべきことは多い。もっとも、一口に「韓国ドラマ」といっても、ピンからキリまであるのだが。
■銀座にでて版画展を見た後、たまたま銀座シネスイッチで上映中の「カンバセーションズ」が面白そうなので見てしまった。全編が、10年ぶりに再会した男と女の「会話」でつづられる異色作。画面が真ん中でふたつにわけられ、当初、それがわずらわしく、理解のさまたげになった。
二人が再会したのは男の妹の結婚パーティ。後半、二人が関係をもち、二人の背景があぶりだされてくるころから惹きつけられた。関係をもったあと、男は女に今の旦那と別れてくれというが、女は拒絶する。彼女は異国のロンドンで外科医の夫と3人の子供と暮らしている。一方、男には23歳のダンサーの同棲相手がいるが、再会した男女はホテルで性的関係をもってしまう。それも互いを傷つけ合う言葉をなげながらの結びつきである。
■女には3人の子供がいるが、当初、彼女の実の子と思わせておいて、じつは先妻の子であることがわかる。このへん、背景説明を省略することによって効果をあげており、深みにもつながる。男女の会話の妙が命の映画であり、当然、脚本は心憎いうまさに仕上がっている。携帯電話、それも同じタイプの携帯をもっていたことから、互いの恋人や夫に二人の「情事」が知れてしまうところなども、うまい。
■「人生は生きにくい」と男がラストではく台詞が真実味をもって迫る。リアリズムに徹していて息苦しいほどであったが、二人の男女の会話だけで90分近くを「もたせてしまう」力量はたいしたものだ。
ハリウッド映画には珍しく夢のない作品であるが、実験作として買える。監督はこれが2作目というハンス・カノーザ。ハーバード大出身の俊英である。脚本はおなじくハーバード大出身の30歳のガブリエル・セヴィン。この若さで38歳の男女の微妙な関係をじつに巧みに描いていて、才能を感じさせる。セヴィンは小説も書いており『天国からはじまる物語』(理論社刊)は15ヶ国に翻訳されているという。
■こういう映画は「お客」としてではなく、ここはヒントになるな、などと思いつつ「脚本家」としての目で見てしまうので、純粋に鑑賞するというわけにはいかない。
映画についてはほかに試写会の案内もきているのだが、「貧乏暇なし」なので、いけそうにない。舞台の案内も、この1,2週に限っても6件ほどきている。いずれも知り合いが関係しているので出来ればみんな見に行きたいのですが――。
割ける時間が限られているので見に行くのは1件だけになります。わざわざご案内を送ってくださった方々、悪しからずご了解ください。