コラム


by katorishu
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異色の役者、根本和史の一人芝居を見た

 2月21日(水)
■下北沢に最近できた小劇場「楽園」のこけら落とし公演『五つの大罪、死刑!ぴたっ』を見た。ぼくの芝居に何度も出てもらっている元黒テントの異色役者、根本和史の一人芝居である。8年ぶりの公演ということだ。以前の舞台を見ることができなかったので、興味深く拝見した。脚本・演出は「マルティ作家」ともいうべき高平哲郎氏。

■根本氏は不器用な俳優で、そこが売りになっているのだが、今回も不器用さはかわらず、充分すぎるほど「根本色」を出していた。高平氏によると、キャラクターは漫画家の山上たつひこ氏から得たとのことで、5つの短いエピソードからなる、ある死刑囚の物語で、随所にブラックユーモアがちりばめられていて楽しめた。
 還暦をすぎた根本氏が全身で渾身の芝居をしており、熱気が伝わってくる。死ぬまで役者を貫いて欲しいものだ。

■芝居を見てそのまま帰宅するわけにはいかない。近くの酒場で久しぶりにあった面々と歓談。女優の新井春美さんやタレントの大竹まこと氏他、作曲家、演出家等々。
 大竹氏から人気番組に育った「テレビタックル」の舞台裏など興味深い話も聞いた。「今の社会は悪意に満ちた社会だ」と大竹氏は語っていたが、その通りである。自分の存在を示すために他をけなし罵倒する。それが風潮になっている。
 大竹氏が出ている関西ローカルの「ほんわかテレビ」とかがあるそうだが、馬鹿馬鹿しくて面白いとのこと。関東にないお笑いだという。

■大竹氏によれば、伊東四郎氏やビートたけし氏は「コメディンの天才である」とのこと。昔、伊東四郎さん主演の65回連続の昼帯ドラマ『ああ単身赴任』を書いたことがあるが、伊東さんは台詞覚えが早く、スタジオに台本をもたずにやってきて、台本通りにみごとに演じる。さすが浅草軽演劇で鍛えた人だけある、と思ったことだった。

■酔ったついでといってはアレであるが、新井春美さんの一人舞台の脚本を書くことを約束してしまった。今の社会に決定的に欠けているのは「優しさ・思いやり」であり、その点で意見が一致した。この視点から切り取ることができればと思って安請け合いをした。
 新井さんは画家としての腕前もなかなかのものだが、最近、法政大学に入学し、「キャリアデザイン」とかいう学科を専攻しているのだという。「若い人から学べるんですよ」と話していた。
 息抜きを兼ねた歓談の中から、いろいろと想を得ることがある。寝不足であり、舞台を見るのは少々辛いなと思っていたが、出かけてよかったと改めて思ったことだった。才気ある人たちとの歓談は楽しく、「生きた時間」を確かに生きたという実感を味わえる。
by katorishu | 2007-02-22 01:55