小島典子の「マクベス夫人」は秀逸
2007年 03月 03日
■六本木の俳優座劇場で『マクベス』(タイプス公演)を見る。タイプスという劇団はシェークスピア作品をしばしば公演しており、『マクベス』は4回目だという。ぼくはこの劇団の公演を3,4回見ているが、いずれもパワフルで若さ溢れる芝居を展開しており、独特の味を出している。今回は小島典子がマクベス夫人を演ずるので、ぜひ見に行かなくてはと思った。
■作・演出を担当した『メアリーという名の姉』の公演に彼女に出てもらったことがある。そのときは「端役」であったが、舞台女優としての資質はなかなかのものと思っていた。タイプスの公演はその縁で見ていたのだが、小島典子の成長は著しく、今回のマクベス夫人はぼくがこれまで見た彼女の舞台の中で抜群で秀逸、当たり役といってもいい。
■とくに舞台では「役者は声」とかねがね思っているが、本日の公演で改めてそう思った。小島典子は声の響きがよく、緩急のつけかた、つぶやき、張り上げ、惑い……などなど、シェークスピアの台詞を「自分のもの」として全身で表現していた。後半、この手で王のとどめを刺したことが強い罪障感となって、不安で気が触れたようにおののく場面は迫力があり、真に迫っていた。幕間で隣に座った若い女性が「シェークスピアの台詞って難しくとよくわからないとこが多いけど、マクベス夫人が出てくるとよくわかった。この人はすごい」と話していた。みんなよくわかっているのである。
■男優の多い舞台で、演出のテンポも小気味のいいものであったが、惜しむらくは滑舌の悪い人が何人もいて、早口なので台詞の意味が聞き取りにくい。そんな中、小島典子の台詞はじつに素直に耳にはいる。この劇団の看板女優となったばかりか、どの劇団にいっても充分に主役を張れる、と思ったことだった。若い人の成長著しい姿を見ると、気分がいい。
■世界同時株安が止まらない。ちょっと厭な予感がする。景気が冷え込むと、その余波を真っ先に受けるのは下請けの中小零細業者であり、フリーランスの職業の人もすくなからず影響をこうむる。
世界を席巻しつつある市場原理主義の「負」の部分がこんな形で顕在化したということだろう。市場原理主義への反省が生まれるのはいいことだが、経済変動によって悪影響をモロに受ける層は生活が成り立たなくなるし、こうした短期間の低落現象は歓迎できない。週明けの株価の推移が注目される。