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人間の闇を深くえぐる映像作家、今村昌平監督とマーティン・スコセッシ監督

 3月17日(土)
■NHK教育テレビETV特集「今村昌平に捧ぐ」を見た。今年「ディパーティッド」でアカデミー賞を受けたマーティン・スコセッシ監督へのインタビューを中心に構成された1時間半の番組で、スコセッシ監督が「師」とあおいだ今村昌平監督の作品について語っている。今村作品から強い影響を受けたと的確な作品分析をこめつつ語っていて興味深かった。

■今村監督については、「今村昌平伝説」という本を書く際、「今村組」のスタッフや出演者を中心に30数人にインタビューをした。極めて興味深いエピソードに満ちており、ぼくとしても面白い仕事だった。
 今村作品のなかでは「にっぽん昆虫記」と「赤い殺意」「復讐するは我にあり」が最高傑作であると思っているが、スコセッシ監督の評価もほぼ同じようだ。「豚と軍艦」もいれるべきだろう。
 スコセッシ監督はカンヌ映画祭で大賞を受賞した「楢山節考」も高く評価しているが、ぼくには前記4作に比べると、やや面白さに欠けると思った。もちろん「楢山節考」も興味深い作品でカンヌで大賞を受賞したのもうなずけるが、人間の奥底に宿る闇を深くえぐる点で、「にっぽん昆虫記」などの作品に軍配をあげたい。

■スコセッシ監督が最初に見て衝撃を受けた作品は「にっぽん昆虫記」であるという。ぼくも学生時代にこの映画を見て、それまでの日本映画とは違って人間を昆虫や動物と同じ地点に置いて描く点が面白いと思った。
 スコセッシ監督の「ディパーティッド」が「復讐するは我にあり」から影響を受けているとは、このテレビ番組で初めて知った。人は生き延びるためには、ひどいこともするし、それが人間の本質であることを、今村監督はもちろん、イタリアのシチリア島出身で貧乏なニューヨークのリトルイタリーで育ったスコセッシ監督はよくわかっていた。両者とも冷徹な目で人間存在を直視し容赦なくえぐる。

■スコセッシ監督には例えば「タクシードラーバー」などの殺人の鬼と化す人間をするどくえぐる作品がある。この作にも「復讐するは我にあり」の影響があるかもしれない。
 二人の監督の作品は「娯楽映画」ではなく、楽しいものではないが、欲望の過剰に肥大した人間という生き物について深く考えるヨスガを与えてくれる。
 人間存在そのものが危機的状況を呈しつつある中、今後、スコセッシ監督や今村監督の作品の重要性はますます増してくるだろう。今村監督が最後まで執念を燃やしていた少年と遊女の微妙な関係を描く「新宿桜幻想」なども見てみたかった。70歳をすぎてから糖尿病などが悪化し、エネルギーも減退し、満足に作品を撮れる状態ではなかったようだが。

※ところで、今年4月5月に京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで、昨年物故した今村昌平監督と黒木和雄監督の「追悼特集」の映画上映が行われます。会場で販売されるパンフレットに10数枚の「映画とカネの悩ましい関係」という一文を書いている関係でPRを記ます。
 興味のある方はぜひ足を運んでみてください。フィルムセンターのホームページに詳しい日程が載っているはずです。
by katorishu | 2007-03-18 02:21 | 映画演劇