権力は腐敗する
2004年 10月 23日
社会保険庁などの職員が、出版物などで監修料を受け取っていたことが問題になっている。新聞報道によると、2003年度までの5年間で、延べ877人に上り、総額は7億4850万円になるという。
「長年の慣習」で受け取っていたと、職員はいいわけをしているということだが、とんでもないことである。
対象となった出版物の中には、年号が変わるだけで内容がほとんど改訂されないものや、似たようなパンフレットを表題と体裁を変えて大量に刊行しているケースもあった。
業者が支払う「監修料」は、各課の担当係長に一括して払い込まれた上で、一度は本人に手渡された。しかし、その後、それぞれの職員が「拠出」し、課ごとにプールされることが慣例となったという。
これらは、残業時のタクシー代が約4億円、深夜の夜食代が約7000万円。税金分1億5000万円を除き、残りは職員どうしの懇親会の費用として使われたというが、ほかに、約4億6000万円は社保庁の職員に支払われた。彼らの「役得」になっていたのである。
官僚組織のなかで、おそらくこれは氷山の一角だろう。
敗戦後、いろいろなシステムの改革、改善が行われたが、官僚制だけは手つかずに保存されてきた。官僚統制も戦後の復興期には、それなりのプラスの役割も果たしたのだろうが、今は阻害要因ばかりだ。
天下りの問題、特殊法人のファミリー企業の問題……等々。彼らがどう理屈をつけようが、要するに、国民の税金を「合法的に」かすめとって自分たちで分け合っているのである。
骨抜きの政治資金規正法などもその典型だが、形の上では一応「合法」というシステムをつくりあげているので、なかなか犯罪として告発しにくい。
権力を握る自民党は財政難を解消するため、 社会保障費の削減を党の方針にもりこみ、国・地方財政の三位一体改革の流れの中で、約20兆円ある地方向け補助金のうち、6割近くを占める社会保障関係の補助金を見直すとのことで、生活保護費や市町村に交付している国民健康保険(国保)の「調整交付金」を削減しようとしているようだ。
それも結構だが、それをいうなら、官僚や官庁、それに準じる組織に寄生している人たちの「経費」「給料」などの削減を同時に打ち出すべきだろう。
ソ連や中国清朝が滅びたのは、硬直した「官僚統制」が主な原因のひとつである。
人間、弱いもので、利権や権限をもった地位についてしまうと、よほど強い克己心や自己抑制をもたない限り、自分でも無意識のうちに「特権」を行使して、己れを利する行為をしてしまうものである。
「市場経済」「自由経済」がベストだとは思わないが、官僚統制国家より、透明度が増すし浄化作用もより多く働く。
官僚を数年交代で変える……というのが理想かもしれない。しかし、現実的に無理なので、とにかく資金の流れや給料、特権、利得、余禄……等を、納税者が監視し、検証できるシステムをつくっていくしかない。
犯罪の防止策などといって、現在、街の至る所に監視カメラなどが設置されているが、税金を「かすめとる」、「盗人」への監視システムの構築のほうが、より大事な気がする。 ただ、警察も検察も官僚組織であり、上にいけばいくほど「官僚支配」のシステムができあがってしまっているので、自分たちの不利になるようなことはなかなかしない。
天下りや高額な退職金など、税金を「かすめとる」、一見「合法的な」悪事を、どう監視し、これにブレーキをかけていくか。
時代の閉塞感を打ち破るためにも、ぜひ必要なことで、そのためには、まず政権交代によって、積年にわたって癒着した政官財の垢をこそぎ落とすことである。
これが、浄化のための第一歩。
政策に関して、大同小異だとしても、すくなくとも政権が交代すれば、前の政権に付着していた「垢」は、すくなからず、こそぎ落とされる。
「権力は必ず腐敗する」
歴史を読めばよくわかるが、残念ながら、これが「歴史の真実」である。