「新聞とテレビがなくなる日」
2007年 03月 28日
■俳優の植木等さんが死去した。享年80。昭和という時代を画する典型的な人であり、こういう人の死を聞くと、ある時代が終わったと改めて感じる。ぼくなど植木等他のクレイジーキャッツの演じるコメディをテレビや映画でよく見た世代であり、ずいぶん楽しい思いをしたものだ。ばかばかしさの中にユーモアやウイットがあった。
■80年代のお笑いブームで、いろいろな「お笑い」が出てきて、今や「お笑い」が娯楽の主流になっているが、今の笑いにはどうも「ユーモア」が欠けている。
一口にいうと「下品」。吉本興業系のお笑いに、そんな傾向が強い。下品な笑いもあっていいのだが、それが圧倒的な力をもち、ユーモアのある笑いを駆逐してしまった。
■週刊誌によると、吉本興業で「お家騒動」が起きており、一部暴力団の関与がいわれているという。「女興行師吉本せい」という本を大変興味深く読んだことがあるので、吉本興業の成り立ちについては、多少とも知っているが、最大、最強の芸能プロとなったことで、多額のカネが集まり、悪い面が強く出ているのだと思う。
■結局は受け手の問題である。受け手が下品になれば、自然の流れとして演じ手の多くも下品になっていく。
今週発売の週刊朝日で電通総研前社長の藤原治氏と田原総一郎氏が「新聞とテレビがなくなる日」というタイトルで対談をしているが、藤原氏によれば、新聞は現在、「自前でコンテンツを作っている」が、テレビはジャーナリズムを標榜しているわりに、番組製作をどんどん下請け孫請けに出しており、ネットとテレビが融合すると今のようなテレビ局はいらななくなる、と語っている。
藤原氏が最近だした『ネット時代 10年後、新聞とテレビはこうなる』(朝日新聞社)という本にからめた対談だが、非常に興味深い内容だった。
この本をテレビ局の中堅、40代50代にぜひとも読んでもらいたいと藤原氏は強調していた。この対談を読んで、ぼくも氏の本を読みたくなった。
■「あるある大事典」で不祥事を起こした関西テレビが民放連から除名になった。準キー局としては初めてのことだという。本日、民放連に行く用事があったが、ある階に数多くの取材陣が集まっていた。この件で記者会見を開いたのだろう。
この不祥事をきっかけに、今度こそ本気でテレビ局の「自浄作用」と番組の質の向上を願いたいものだが。一時しのぎでやりすごそうとしたら、「テレビに明日はない」。藤原氏の発言が強い現実味をもってくるというものだ。かといって、今の「インターネットテレビ」の内容も「いやはや」と思われるものが多い。
依然として日本は「タイタニック号の上でポーカーゲームをやっている」状態を続けていて、誰も本気で舵を切ることをしない。