コラム


by katorishu
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

イギリス海兵拘束事件で、「勝った」のはイラン?

 4月8日(日)
■BBCのデートラインという討論番組で、イランでのイギリス海兵15人の解放に関して、結果的に完全にイランのアフマデネジャロ大統領の「勝利」に終わったと複数の専門家は話していた。ブレア首相は外交で負けていたという。イラン外交はしたたかで、イギリスと背後にいるアメリカは何も得をしなかった、というのが国際政治での評価であるようだ。

■アメリカはこの事件を好機ととらえ、イラン空爆のプログラムの具体化にはいっていたようだ。そんなアメリカの動きも読んで、アフマドネジャロ大統領は巧みな「演出」を行ったのである。力の弱い者が強大な力をもつものに対抗するには、最大限知恵を絞ることになる。逆に力におごるものは、どうしてもやりかたが雑になり勝ち。
 アメリカ・イラン戦争は当面回避されたが、まだ予断を許さない。ブッシュ政権内にはイランの軍施設への空爆をするべきとの強行派の意見も根強い。

■中東問題の根底にあるのは「イスラエル問題」である。イラン大統領はイスラエルを地上から抹殺すべきである、と大統領就任間もない時期に公言しており、まだこの言葉を公式には否定はしていない。
 ユダヤ系金融資本が中心になってアメリカを牛耳っているので、しばらくアメリカ・イラン関係をめぐって国際情勢は緊張がつづくだろう。
 アメリカが国連軽視をつづけていることも、国政政治の大問題である。日本はそんなアメリカに国連重視を強く訴えるべきなのに、相変わらず「鼻息」を伺うことに終始しているようだ。

■なにしろ「現代のローマ帝国」なのだから、ご機嫌をうかがわないと、大変なことになる――という点はわかるが、それにしても、他の「小国」が巧みな外交を展開しているのに比べ、相変わらず「外交不在」がつづく。
 北朝鮮の核開発をめぐる6者協議でも、北朝鮮の巧みな外交が「勝利」したという意見が、専門家の間では支配的だ。日本はどうもカヤの外におかれている。

■今後、アメリカ追従外交をつづけているだけでは、複雑多岐な国際外交を乗り切ることはむずかしくなるだろう。損得勘定で考えれば、強い者、つまりアメリカに追従していれば安全……という論理も成り立つのだが。肝心のアメリカが、イラク戦争の失敗で、後退を余儀なくされるし、ブッシュ政権以後は、対日関係も相当見直してくるに違いない。
 そこまで深く読んで外交の舵を切っているのか、安倍政見の外交担当の顔ぶれを見ていると「お友達内閣」のひ弱さが出ていて、こころもとない。

■「文明の衝突」を書いたハンチントン教授は,日本が今後、中華文明に擦り寄っていくと予測している。一見、奇矯な言い方だと、7,8年前に読んだとき思ったが、今、現実味をもってきている。
 文明の衝突も現実に起こっているし、ハンチントン教授の見通しは、残念ながら当たりつつある。今後、多極化するに違いない国際政治の中、今の日本のような貧困な外交力では、結局、大国、中華帝国にすり寄るしかないかもしれない。
 常に「強い」ものに寄り添い、機嫌をうかがいながら生きる。「寄らば大樹の陰」と同じことで、それが日本の生き方だとしたら、情けないことである。

■本日は東京都知事選挙の投票日。早い時期から現職の石原知事有利という情報が流れていた。率直にいって、浅野氏は地味だし浮動票をとりこむだけのアピールが不足していた。どうもこの人には内面から匂ってくる魅力がない。明るさもない。東京のように膨大な数の有権者を引きつける選挙では、どこかに「ワルの魅力」といったものも必要なのかもしれない。政策を云々する前に、存在感である。現実の政治は「生身の人間」がやるものであり、学者や官僚とは違う。浅野氏は「参謀」役が似合うのではないか、と思ったことだった。

■今回の首長選挙で現職は全員が当選したという。やはり現職は強い。損得勘定で考えれば「勝ち馬」に乗るほうが得ということなのだろう。で、作家の石原慎太郎氏が今後、4年間都政を担っていくのだが、「側近政治」からの決別が出来るかどうかを、まず注視したい。当選が決まって、石原知事は「若い人に夢を与えたい」と語った。それは大変結構なことだが、権力の「おこぼれちょうだい」を期待している人や組織が明日からでも、うごめきだすに違いないので、そちらにあまり「夢」を与えないようにしてもらいたいものだ。
by katorishu | 2007-04-09 01:54