コラム


by katorishu
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日本の高校生、意欲が過度に減退という調査結果

4月24日(火)
■国や組織にあてはまる普遍的「原理」として、その組織の「強み」であったものが時間の経過とともに組織の足をひっぱる「弱み」となり、組織(国)の没落の原因となる。ローマ帝国はその典型例だが、現代の超大国アメリカも「他に並ぶものなき強大な軍事力」で世界ににらみをきかせていたのだが、強者の驕りで軍事力を過信しイラク戦争にのめりこんだ。すでにこの戦争の失敗は明らかで、強さが凋落の引き金になろうとしている。

■じっさい膨大な軍事費はアメリカの国家財政をむしばんでいき、今後にっちもさっちもいかない事態になるに違いない。アメリカの指導者が、なんらかの形で「財政負担」を日本に肩代わりさせようともくろんでいることは容易に想像できる。近く行われる安倍首相の訪米で、そんなことも密かに話し合われるのではないか。

■このほど、日米中の三カ国の高校生の意欲調査なるものが行われたが、「出世意欲」で日本は断トツ最下位という結果がでた。財団法人「日本青少年研究所」(千石保理事長)の「高校生の意欲に関する調査-日米中韓の比較」で、06年10月~12月、日米中韓の高校生計5676人を対象に実施された。

■毎日新聞ウエブ版によれば、「偉くなりたいか」という問いに、「強くそう思う」と答えた高校生は中国34.4%▽韓国22.9%▽米国22.3%に対して、日本はわずか8.0%。卒業後の進路への考えを一つ選ぶ質問では、「国内の一流大学に進学したい」を選択した生徒は、他の3国が37.8~24.7%だったのに対し、日本は20.4%。 将来就きたい職業(複数回答)では、日本は99年調査よりも弁護士や裁判官、大学教授、研究者の割合が低下。特に、公務員は前回の31・7%から大幅減となる9.2%だった。逆に「分からない」を選んだ生徒が6.2ポイント増の9.9%になったということだ。

■千石理事長は調査結果について、今の高校生が食べることに困らなくなり『偉くなりたい』という意欲がなくなってきていると、分析している。要するに意欲や若さが減退しているのである。まるで老人のような若者が増えているということか。戦後の日本の強みであった経済が、結果として意欲のない若者を多く生み出していると解釈すべきだろう。
 
■恐らく高校生の多くは将来も現在の生活が続くものと漠然と思っているのだろう。現在、「結構な年金」をもらい「結構な貯蓄」をしている年金生活者にしても、同じである。
 現在、世界は激しく動いており、10年後、20年後、どうなっているかわかったものではない。歴史をひもとけば一目瞭然であるが、現状肯定、現状維持にきゅうきゅうとする人は、激変の時代は凋落の憂き目を見る可能性が強い。
中国の清朝の時代、社会の特権にアグラをかいていた官僚たちは、短期間に中華帝国が凋落していくとは、夢にも思わなかったはずである。しかし、事実そうなった。

■少子高齢化が極端に進む日本も、激変の嵐のまっただ中に巻き込まれる。現行のシステムがそのまま続いているという保証など、どこにもないのである。この世は常ならず。無常が今も昔も生き物の営みの本質である。良い悪いに限らず、「嵐」が寄せてくる。嵐に耐える体力を保持し、対策に知恵をしぼり、人事を尽くして天命を待つ。そんな時代に入ったと解釈したほうがいい。

■近い時代に第三次世界大戦のようなものが起こる可能性は低いが、天然資源の争奪戦がいろいろなところで起こり、石油資源も枯渇するだろう。そうなると、石油資源の大量消費の上に成り立つ「文明」は危い。
 アメリカは今後、世界の憲兵であることから手をひかざるを得ないだろう。アメリカが退いたところにイスラム国家群が出てくるか、あるいは中国、インドなどが出てくるか、予想は出来ない。

■はっきりしていることは、資源獲得競争が熾烈になることである。次代を担う日本の高校生の覇気のなさを見ていると、日本はこの先、大丈夫なのかと心配になる。なにも我欲をだせとか、欲望ぎらぎらにせよ、などといっているのではない。若者の特権は、実現するかしないかは別にして「夢」や「希望」にむかって、欲求不満をエネルギーにして突っ走ることである。そこから何か新しいものが生まれてくるはずなのだが、今回の調査結果を見ると、なんとなく安閑としている姿勢が目立つ。それが未だに「欲求不満のエネルギー」を燃やしているぼくなどには、ひどく気になるのである。
by katorishu | 2007-04-25 00:17