世界の食糧危機が大きく悪化しているという
2007年 05月 04日
■毎日新聞ウエブ版で、「世界の食料事情が大きく悪化するのではないかとの懸念が広がっている」との記事を読んだ。深刻な事態が進行しつつあるようだ。
中国などの経済成長や発展途上国の人口増で食料需要が急増した結果、食糧不足になり、価格も上がっているのだという。
「世界の穀物取引の中心、米シカゴ商品取引所では昨年後半からトウモロコシ、小麦、大豆の価格が急騰している。水産物も、マグロの漁獲制限をはじめとした資源の制約と、中国、欧州など世界的な魚食の拡大で値上がり傾向にある」と記者は書いている。
■柴田明夫・丸紅経済研究所所長によると、「世界の食料在庫率は減少しており、(食料危機と言われた)1970年代と似てきた」とのことで、世界の穀物在庫率(年間消費量に対する在庫量の割合)は99年に31.6%であったのが、06年には15.5%と半分以下の水準に急減している。
■バイオエネルギーの使用をブッシュ大統領は呼びかけているが、付け焼き刃にすぎない。自動車社会を根本的に見直すことからはじめないと、深刻な事態に対処できないのではないか。
日本も、そろそろアメリカの真似をやめて「車社会」からの脱皮をはかるべきだろう。折からゴールデンウイークの連休で高速道路はどこも渋滞であるという。昔、車に乗っていた時期があり、そういう渋滞にしばしばまきこまれた経験があるが、これほど時間と資源の無駄はないと思っていた。「みんなが車に乗るから」という理由で車を保持している人も多いようだが、ぼくにいわせれば愚かしい。
■地方では車は必然――という意見がある。そういう地方もあるだろうが、車社会にしてしまったために、地方のバスや電車などの路線が廃止されたり、間引きされるようになったところも多いはずである。仕事でどうしても車を利用する人は仕方がないとして、それ以外の理由で車に乗っている人のうち2割でも車をやめたら、どれほど環境汚染がまぬがれ渋滞も解消することか。
■そうすると車産業やこれに関連する産業の景気が悪化するという意見が出ることだろう。確かに一気にシステムを変えると、バブルを一気に崩壊させたときのように多大な血が流れるが、徐々にシステムをかえて、たとえば車関連産業からはみでた人間が、自然保護とか文化事業、崩れ去ったコミュニティの再生、老人介護などに転用できるよう、軸足を移していけば、多大な血が流れずにすむのではないか。
■日本人はそれほどバカな民族ではないはずなので、「車社会後の社会」のあり方について、知恵を働かせて、対処法を考えだせるはずである。車社会から脱皮できれば、その波及効果は大きい。「我が世の春」を謳歌している企業は没落するかもしれないが、瀕死の状態にある中小商店や中小零細には救いとなる。「車社会」からの脱皮は、「昔ながらの町」の復活につながるはずであるから。
■現在、日本の食料自給率は「カロリーベースで40%と先進国では突出して低く、世界の食料事情が悪化すれば必要量を確保できなくなる心配がある」とのことだ。
事は国民の安全に直結する食糧問題だけに、対処をあやまると大変な事態になる。本来、自然環境が豊かな国であったはずである。これまでの農業政策をただし、食糧自給率を60、70パーセントぐらいにもっていくことを、政府は真剣に考えてもらいたいものだ。
■「生活水準を落とさずに」このまま環境を悪化させ、深刻な食糧危機を招くより、少々生活水準を落としてでも、自然と共生する方向にハンドルを切るべきときにきている。この面で日本は世界の先端に立ちうる立場にいると思うのだが、権力を握っている人間やその周辺でちょろちょろしている人間は、物欲の権化が多いので、有効な手を打つことをしない。
■やはり、危機が現実に目の前に「見える」ようにならないと、駄目なのか。国民の多くに危機感の薄いことも、大いに気になることである。最大の危機は、危機を危機と認識できない(したがらない)人の多いことである。だから、必然の結果として、政治家も官僚も有効な手だてこうじない。環境問題に関しては、危機が目に見えるカタチで迫ったときには、どんな対策をとっても、すでに遅いのである。