コラム


by katorishu
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アメリカ「メディア王」の野望に歯止めを

 5月24日(木)
■FOXテレビの創設者で「メディア王」などといわれるルパート・マードックが、「ウオールストリート・ジャーナル」などを傘下におさめるダウ・ジョーンズ社の買収に乗り出した。6000億円の買値をしめしているようだが、ダウ・ジョーンズ社ではマードックが「編集権」に介入するのでは、と警戒を強めている。

■すでにマードックはタイム社などを買収している。一方、FOXテレビはブッシュ政権よりの姿勢を鮮明にしめし、イラク戦争をはじめるための世論作りに大きくかかわった。
 いわゆる「ネオコン」のPR機関の役割も果たしているといっていいだろう。
 
■アメリカの新聞もインターネットの普及で、かなり部数を落としており、危機感は相当なものだ。そこにカネの力ではいりこみ、自分の好みの世論をつくりだそうとする。ごく一握りの例外はあるものの、「なんとか王」などというものに、ロクな人はいない。
 一方「買収王」とうたわれている40代前半のアメリカ人が、「ブルドッグソース」や「さっぽろビール」など日本の企業の買収に乗り出している。 「ハゲタカファンド」といわれる外資(ほとんどはアメリカ資本)によって、すでに日本の企業は相当程度食い荒らされている。
 こういう外資のたくらみにのって、これに加担する日本人「株主」も多い。

■「会社は株主のもの」といった言葉が、小泉政権以降、日本でもしばしばいわれており、そのことに違和感をもたなくなった日本人が増えている。
 じっさい、一部株主の傲慢さは目にあまる。株さえもっていれば会社など煮て食おうが焼いて食おうが「自由」といった傾向に歯止めをかけないと、地球は多くの人にとって住みにくいものになっていく。
「自由競争」は結構なことだが、一部金持ちに極めて有利なシステムが問題である。このシステム、一度強固なものが出来上がってしまうと、「平和的に」「合法的に」出来上がったシステムなので、なかなか壊れることはなく、逆にタチが悪いともいえる。

■独裁者などが武力、暴力で築き上げたシステムは、目に見えるカタチで「悪」が存在するのに対して、「合法的」につくられたシステムは、「悪」がオブラートでつつまれて見えない。相変わらず「官製談合」を繰り返す官僚システムなどその典型である。
 金力という権力をふるう「当人」も、良かれと思って「善意」の行動をとったりする。「民主主義」は素晴らしいもので人類普遍の原理であるから、世界にひろめようという考え方などもそうである。宗教の布教に使命感をもっている人も「世のため人のため」だと強く思っている。

■こんなにも「素晴らしく」「理想的なもの」であるのだから多くの人にひろめよう、というところまではわかるし、やってくださって結構。しかし、こんな「素晴らしいもの」を拒絶し否定するなんておかしい、そういう人や組織は「悪」であるから、これを懲らしめ退治しなければならない、となると問題である。

■カルトなどの宗教は「目に見える」ので、システムに乗らない人間も多いが、金融システムの「悪」の部分はなかなか顕在化してこないので、素人は騙されてしまう。
 これがどうも社会システムとしては比較的よさそうだ、という程度のことで、「市場原理主義」が唯一絶対の理想のシステムだ、などといえはしない。統制経済より、ましといった程度である。アメリカ社会の一部富裕層と、極貧層の存在を見れば、いかに問題をかかえたシステムであるかわかるというものだ。この「原理主義」を功利的に利用した中国の、天文学的に開いた「格差社会」も、そのことを証明している。

■ダウ・ジョーンズ社は頑張って、このオーストラリア生まれの「メディア王」の野望に屈しないで欲しいものだ。繰り返すが「……王」などというものにロクな人間はいない。おのれの強欲を実現させた人間の別称であり、その影でどれほど多くの人間を押しつぶし、泣かせ、哀しませ、ときに死に追いつめてきたことか。歴史を読めば一目瞭然である。
by katorishu | 2007-05-25 02:50