5000万件の「幽霊」をつくった社会保険庁
2007年 05月 26日
■社会保険庁が保管する年金納付記録に、対象者のわからない件が5000万件にのぼっていると報道されたが、驚きあきれるばかりである。
結構な月給をもらいながら「幽霊」を大量生産していたようなものである。その罪は重いはずだが、誰も罰せられない「無責任主義」がまかりとおっている。
政府は全部調べるようなことをいっているが、数が多すぎて細かく調べられるはずもない。領収書などの「記録」が残っていない人は、恐らく救済されない。
■安倍首相の答弁を見ていると、ごく一部のひとを「救った」というカタチだけつけて、終わりにしたいというのがホンネだろう。選挙も近づいているし、ポーズだけはとっておくのだろう。ポーズで終わらせないために、現実に政府がどういう処置をとるか、国民はしっかり監視しないといけない。
1997年、国民一人一人に新たな基礎年金番号を割り振ったが、そのさい、国民年金と厚生年金の加入者それぞれに年金番号が付与されていた。ところが、転職や転居、結婚で姓が変わったなどで複数の記録を統合する場合、完全に把握しきれない上、加入者本人や勤め先の記入ミス、自治体の処理の誤り……等々で、こういう「国家の恥」を天下にさらしてしまった。
■加入者の納付実績を記した名簿を廃棄してしまった市町村も相当数にのぼっているようだ。これは「公務員」の立派な「犯罪」ないし、それに準じるものだ。
怠慢な処理をした「公務員」の多くはすでに退職して、自分たちは結構な退職金と結構な年金をもらって、それなりに「優雅な老後」とやらを過ごしているのではないか。
すべてとはいわないまでも、例の「官製談合」などで税金を「吸い取っている」寄生虫のような連中と同じように罪深いことである。
■国民から吸い取っているオカネである、という自覚がほとんどないから、こういうことになる。この件で、関係した公務員はまるで責任をとっていないし、今後もとる人はいないだろう。
昨日、逮捕された林野庁の天下り役人などの件と同様、「役人天国・ニッポン」を象徴する出来事である。もちろん、ぼくにも公務員の知り合いがいて、ひとりひとりは「良い人」が多いのだが、システムの中で長年生きていると、惰性や慣れといったもので、神経が麻痺し、「ことなかれ主義」におちいってしまう。
■財政悪化を政府は参議院選挙後、消費税の増税で補おうとしているようだ。その前に公務員の無駄遣いを根本的にあらためるのが先ではないか。今回のような「怠慢」に対しても、ちゃんと責任をとらせるシステムをつくるべきだろう。
そういえば社会保険庁の役人がからんだ「グリーンピア」建設という膨大な年金の無駄遣いについて、その後、責任の追及はほとんどされていない。あれは日本の恥であり、「役人天国」「官僚汚職大国」中国の前近代性を笑えなくなる。
過去を簡単に「忘れやすい」国民性は、そろそろあらためたほうがいい。