「週間ダイヤモンド」が「テレビ局崩壊」という特集
2007年 05月 30日
■「週間ダイヤモンド」の6月2日号が、「テレビ局崩壊」という特集を掲載している。大阪の地下鉄内のつり革広告を見て、さっそく買った。インターネットの急速な普及と、2011年から始まる「デジタル化」などがテレビ局におよぼす影響を中心にいろいろな角度から検証していて、興味深い。
■率直にいって11年から、」アナログを廃止しすべてのテレビ放送をデジタル化することは「不可能」に近いと同誌は指摘する。現在2000万台以上あるとされるアナログテレビ受像器を、11年までにすべてデジタル化することは、物理的にむずかしい。また現在のテレビでいいと思っている人の理解も得がたいという。
デジタル化によって大量に廃棄されるアナログテレビが環境問題におよぼす影響も見過ごせない。
■アナログでデジタル放送を受信するには、チューナーだけ買えばよいという意見があるが、じつは複数のテレビで受信する場合、ブースターが必要になり、コストは数万円になる。低所得層には痛い出費であり、とても「国民的合意」は得られない。
当初から、数々の問題をかかえながら、家電業界の「ビジネスチャンス」という思惑も交差し、総務省主導でデジタル化に「見切り発車」をしてしまったのだが、問題は山積である。
■特集では、国によって手厚く保護されている既存のテレビ局の「もうけのカラクリ」などを紹介すると同時に、これは「放送免許」に守られた「歪んだビジネスモデル」だと厳しく指摘。さらにテレビ局が番組の「制作能力」を失い、「電波発射台」となりつつあると現状を分析。インターネットの登場によって、「電波発射台」の独占状況が破られつつあると指摘する。
■テレビ局関係者の中には、これまでのテレビの「実績」を強調し、将来的にはインターネットはテレビの脅威になるかもしれないが、自分たちの「優位」は当分揺らがないと思っている人も多いようだ。
5年10年先のことはわからないにしても、日本のテレビが「手本」としてきたアメリカの放送業界では、インターネットの急速な普及を考慮して、新たな「再編」にむけて動きが急になってきている。一方、日本のテレビ局について、同誌は「これまで内部にためこんだ豊富な資金は豪華な本社の建設に使うばかりで、新たな時代に向けての有効な投資に振り向けてこなかった。視聴者のメリットに結びつくような新興勢力との大規模な提携についても一つも実現していない」と指摘する。
■今の社会、ものを作るより人やものを「仲介」する組織等が膨大な利益をあげるシステムが優勢になっているが、こういう状態が「正常」であるとは思えない。正常ではないものは、いずれ崩れるのが歴史の教えるところである。
自ら汗を流して番組をつくる努力をしない既存のテレビは、今後、「構造不況業種」になる、と別の雑誌も特集している。
■じっさい、心ある放送関係者は現在のテレビに強い危機意識をもっている。一方、「恵まれた環境」にあることで、怖ろしく楽観的な業界人も多い。テレビ業界に限らず、「恵まれた環境」にある人間は、おうおうにして「時代の変化」に気づかない。気づこうとしないし、気づきたくないのかもしれない。しかし、時代は確実にかわる。それも急速にかわる。