コラム


by katorishu
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年金記録管理の杜撰は日本というシステムの問題

 5月31日(木)
■社会保険庁による年金の記録管理のズサンさには驚くばかりである。年金記録の台帳破棄を命じた人物として、旧厚生省OBの正木馨氏ほか橋本内閣で法相を務めた長尾立子氏、持永和見・元自民党代議士らを、本日発売の「週刊新潮」が指摘している。

■彼らは「薬害エイズ」人脈にそのまま重なるとのことだ。さらに、年金記録のデジタル化の際、「労働強化」になるとして、社会保険庁職員労組の自治労、国費評議会と社会保険庁とかわした「覚書」の「異常さ」をも、週刊誌は指摘している。
 オンライン端末導入に関する覚書には、
《窓口装置の1人1日の操作時間は、平均200分以内とし、最高300分以内とする》などとの文言があるという。

■5時間以上は仕事をしないということである。50分働いたら15分休むなどという取り決めもあった。記録したものを複数で確認する「クロスチェック」が働いていなかった。当時、自治労の国費評議会がコンピュータ化に猛反対したため、クロスチェックの導入が遅れたことも原因だという。コンピュータ化に際して記録が杜撰になることは当然の結果であり、だからこそアナログ情報の年金台帳が貴重なのに、これをいとも安易に破棄することを命じた。その張本人が上記の厚生省OB等であった。

■彼らはいずれもキャリア官僚であり、退官後、複数の組織に理事長などの待遇で天下ったりしている。
 ほかにも社会保険庁の犯した失策は数々あるが、責任を問われた元官僚は誰もいない。責任を問えるのは年金を支払ったのに、「払ったことになっていない」人たちである。それが5000万件ということは、5000万人に近い人がいるということである。すでに死亡してしまった人も相当数にのぼるだろう。この金額がどれほど膨大なものになるのか、まだ社会保険庁は明らかにしていない。

■杜撰な管理によって本来、年金加入者に支払うべきカネはどうなってしまったのか。かなりの部分は、関係官僚とこれとつるんだ天下り受け入「業者」らによって、食い散らかされてしまった可能性がある。それに「族議員」らがからんでいることも容易に想像できる。その「使い道」が明らかにされたら、国民はさらに唖然として怒り、現行の年金制度は崩壊してしまうかもしれない。

■こういう事態を放置しておいた「国民の代表」であるはずの政治家の責任も重い。
 政官財のつるみの構造はいぜんとして日本のすみずみまで浸透しており、散発的に悪が摘発されるが、根本的解決に至っていない。これは日本というシステムの問題でもある。
 年金に関していえば、年金を徴収する組織と支給する組織が一体となっているシステムが問題である。こういう一体のシステムを維持しているのは、先進国の中で日本だけであるという。

■徴収と支給が別々の組織になっていれば、相互にチェックのシステムが働くはずである。「日本というシステム」に時代にあわないものが多すぎるのである。時代遅れのシステムを根本的に改めるには、言葉の上だけの「構造改革」などではだめで、このシステムで恩恵を得ている「既得権益者」を排除することで、そのためには政権交代がぜひとも必要である。

■戦後、実質的に政権交代がほとんど「ない」先進国は、日本だけである。このへんに日本の歪みの根っこがありそうである。日本にはまだまだ「美点」も数多く生き残っている。これらが根こそぎダメになってしまう前に、根本的な「治療」をしなければいけない、と思うのだが。7月の参議院選挙が注目される。
by katorishu | 2007-06-01 00:36