コラム


by katorishu
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国会は強行採決の連続

6月1日(金)
■暦の上では本日より「衣替え」である。最近は「衣替え」という言葉もあまり聞かなくなった。田舎に住んでいるとそうでもないのだろうが、都会ではほんとうに「季節感」がなくなった。スーパーにいけば、春夏秋冬、たいていの野菜や果物類が手にはいるし、「旬のもの」という概念が希薄になっている。いろいろなものが、みんな「便利さ」「効率的」「快適」という価値観によって殺されていく。

■このところ、国会では政権与党による強行採決が続いている。年金法案などたった一日数時間の審議で強行採決したが、安部政権の焦りの端的な表れである。5000万件にのぼる年金記録消失問題で内閣支持率が急落したあと、追い打ちをかけるように松岡農水相の自殺。ここは強行突破して野党やマスコミの追求をかわすしかないと思ったのだろう。
だが、焦りはろくな結果をもたらさない。

■久しぶりに昼のワイドショーを見た。自民党の舛添議員と民主党の長妻議員が「与野党対決」の議論を展開していたが、立場上強行採決を支持しなければならない舛添議員の言葉には無理があった。本人もこの強行採決が「正しい」とは思っていないはずで、内心の動揺が、やや口ごもる話し方に素直に出ていた。

■本日、新しい農水相に「農水族」の赤城議員が就任した。祖父は赤城宗徳農林大臣で、確かソ連通の議員であったと記憶している。安部首相の祖父の岸内閣の大臣だった。今回、孫同士が総理と大臣という組み合わせになったのだが、典型的な世襲大臣である。相次ぐ世襲議員、世襲大臣の誕生は、日本が民主主義からやや離れたシステムをとっていることの証拠である。

■世襲といっても、職人や芸人であったら、いっこうにかまわないのだが、政治家とくに政権与党の議員となると、問題である。
 なぜこうも数多くの議員が世襲をするのか。そこに「うまみ」があるからである。うまみのあるところ、蜜にむらがる蜂や汚物にむらがるハエのようにすり寄ってくる一連の人たちがいる。
 都会では「世襲議員」は少なくなっているものの地方ではまだまだ多い。政治(税金を巧妙に私すること)で「食っている」人の多い証拠であり、極めて日本的なシステムである。

■もっとも「日本というシステム」は、すべてが悪ともいえなくて、田中角栄首相時代に象徴されるように、富の分散をうながす効果もあった。しかし、今は「日本というシステム」の良い部分は相当程度崩壊し、悪い部分が「グローバリゼーション(アメリカ化)」と結びついたことによって富の偏在を増す方向に働いている。
 本日郵送されてきた『論座』7月号のインタビューで、漫画家の小林よしのり氏が、最近の日本は「共同体」が喪失したことによって、「(長期的な安定した組織の中で醸成されてきた)日本のエートス・魂・あるいは倫理観、規範意識」が壊れてしまったことが、最大の問題であると指摘していた。

■「右翼」と見られている小林よしのり氏だが、極めて「まっとうな」論理を展開していて、面白かった。ついでながら、ひとつPR。この雑誌には拙作のノンフィクション『妖花』が連載されています。だんだん佳境にはいり面白くなる予定です。興味のある方はぜひ書店でお手にとってみてください。ぼくのこの連載と、知人の映画批評家、藤崎康氏の「挑発するシネマ」の連載が、「オピニオン誌」の「政治的で堅い論文」の中ではやや異質のものですが。

■ところで、松岡大臣の自殺の原因についてひとつ。
 週刊誌などの報道によると、やはり緑資源機構の汚職がからんでいるようだ。この件で、松岡大臣をふくめ3人が自殺している。人はそう簡単に自殺したりはしない。それなりの立場にあり病弱でもない「立派な大人」が自ら命を絶つには、「よくよくの理由」があったはずである。検察は緑資源機構汚職で松岡大臣を明らかにターゲットにし、包囲網を縮めていたようだ。今後、さらに重大情報が恐らく週刊誌あたりから出てくるだろう。

■不可解なことがある。この問題で関係者から押収した最重要の資料が、段ボール1箱分、検察庁内で「誤って」消却処分にされてしまった。検察の追求が我が身に及ぶ人間が「防御」のためになんらかの働きかけをやったのではないか。検察はすでに「関係者」から供述を得ているそうで、肝心の情報はあるようだが、杜撰というより、ある「意図」を感じてしまう。

■ 政治とカネの闇は深い。おそらく7月の参議院選挙の結果が、今後の捜査に微妙に影響するだろう。与党が勝てば情報は封印される可能性が強い。
 しかし、特捜部の中には「政官財の癒着」の構造が現在の日本の最大の問題であるととらえ、これを崩すことに情熱と使命感をもっている検事もいる。マスコミの中にもいるはずだが……。
by katorishu | 2007-06-02 02:11