コラム


by katorishu
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週刊誌に見る日本の「恥部」「暗部」 

 6月11日(月)
■週刊誌を読むと、この国のかかえている問題点が透けて見えてくる。本日買ったのは「週間ポスト」。安倍首相の元秘書宅で13歳の少女が、その秘書の「バカ息子」によって監禁レイプされたという。元秘書は今年の3月まで安倍首相の政策秘書をつとめていた人で、例の耐震偽装問題のとき口利き疑惑で国会によばれた。

■「バカ息子」は私立高校生だが、ダンヒルの財布に100万円ほどの現金をいれており、最初はカネで少女を誘い、一時、自宅の自分の部屋に娘を泊めていたという。隣の部屋に父親が寝起きしていた。少女は息子に脅され屋根づたいに息子の部屋を訪れたりもした。両親と一緒に食事をしたこともあるという。ところが、少女が息子から離れようとすると、息子は逆上し監禁した上レイプしたのだという。隣にいた父親は気がつかなかったのだろうか、と記事は疑念を呈している。

■警察でも捜査をはじめたようだが、元とはいえ首相の政策秘書の家でこんなでたらめが行われていたのである。安倍首相の唱える「教育再生会議」がむなしく響く。政策秘書であったからには父親はこの会議の立ち上げになんらなかのかかわりがあったにちがいない。そのほか、この元秘書は習志野市に建設された場外舟券売り場建設にからんで右翼団体から糾弾をうけていた。なんらかの「問題」「疑惑」があったと推測される。

■週間ポストには年金の不払い問題についての新たな疑惑も載っている。前号でポストは消えた年金の額についておよそ20兆円であると推定している。そのうち相当部分は社会保険庁の役人や族議員、およびそこにかかわった業者などによって、いいように食い物にされてしまったようだ。安部政権だけの問題ではなく、この問題を放置してきた社会保険庁や政権与党の責任は特に重い。これは端的にって「国家的詐欺」であり、国民の政府や行政に対する信頼を損なうもので、まことに「美しくない」事態である。

■今週号のポストは「部落差別と結婚」の特集をしている。この問題もまた「日本の恥部」「暗部」であり、先進国として「恥ずかしい」ことだ。マスコミはあまり取り上げないが、未だに結婚に際して部落差別は暗い影を落としている。
 東京にいると差別という問題があまり見えてこないが、関西などでは部落差別は厳然と残っている。結婚に際し「釣書」なるものが、いまだにやりとりされているらしい。そこには両親はもちろん祖父母や親戚などの細かい「出自」が記され、そこにちょっとでも「部落」の影が落ちていると、猛反対され従わないと縁を切るなどといわれるらしい。

■ある女性など被差別部落とはまったく関係のないところで生まれ育ったのだが、兄の妻がたまたま被差別部落と目された場所で生まれたということで、彼氏の親や親戚から猛反対され、結局、結婚をつぶされてしまったという。部落差別は16世紀から17世紀にかけて生まれたもので、皮革業者や逮捕・処刑の従事者をはじめ、芸人なども「河原者」としてその中にいれられていた。「士農工商」の下に位置づけられたもので、差別される者の不満のはけ口として制度的におかれたようだ。

■こういう差別が日本にあることを、ぼくは高校生のとき、島崎藤村の『破壊』を読むまで実は知らなかった。「日本てこういう国なんだ」とかなりショックを受けたことを覚えている。あれから随分時間がたつが、最近「格差社会」がいわれるなか、部落差別がまたぞろ強くなっているとポストは報じている。ポストによれば、総務庁が1993年に行った同和地区(被差別部落)の調査によれば、被差別部落は関東が572地区31万人余、近畿が781地区53万人、九州が835地区45万人で、全国では4442地区215万人強とのこと。

■一定数の同和出身者を行政機関が「優遇」して採用したりするなど「同和行政」に問題があったことは事実で、そのため、国民の一部には「あいつらは」という思いもあるようだ。しかし、今は封建時代ではないのだから、まず差別する方が悪い。長年にわたって因習として根付いたものは、こうもねばり強く生き続けるものなのか。他のことだと案外早く忘れる民族なのに、部落差別に限ってはしぶとく生き続ける。日本の七不思議のひとつである。

■ぼくの周辺では、部落差別が原因で結婚を破棄されたり、就職他で問題が起きたというケースはないが(仮にあったとしても聞こえてこないのかもしれないが)、マスコミ関連で解放同盟などから「糾弾」を受けたという例はよく耳にした。
 ドラマ脚本執筆の際、ぼく自身「この表現はちょっと問題になりそうだから削ってくれ」とプロデューサーから何度もいわれた。「言い換え」のパンフを某局からもらったこともある。
 ドラマのテーマが「輪廻転生」に触れるのでまずいと、脚本を書き上げてからいわれて困惑したこともある。未だに差別問題は続いているのかと驚いたものである。

■差別され行き所を失った若者の受け皿として「ヤクザ」組織がある、と聞いたこともある。一度、社会に根付いた「因習」はなかなか抜けないものだ。世界にはインドのカースト制度や、人種差別、宗教差別など数々の「差別」が充ち満ちている。人間というのは、ほんとに差別することが好きな動物である、とあらためて思う。差別の根底には抜きがたい「コンプレックス」がひそんでいることを、差別したがる人はわかっているのだろうか。差別をされている人が、かえって人を差別するケースも多い。悲しくも、さもしい風景である。
by katorishu | 2007-06-12 03:47