コラム


by katorishu
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暗殺されたロシアの女性ジャーナリストの『ロシアン・ダイアリー』

 
 6月20日(水)
■ロシアのプーチン政権を批判して殺害されたロシアの女性ジャーナリストの「取材手帳」が単行本になった。それを翻訳した『ロシアン・ダイアリー』が、友人の田中和夫NHK元モスクワ特派員から送られてきた。田中氏が解説を書いているが、彼女の非業の死を「ロシアの悲劇」と記している。チェチェン紛争に対するプーチンの力の政策に批判的な記事を書いたことで、当局ないしこれに追随する連中にねらわれ殺されたようだ。
 大部の本なので簡単には読めないが、そのうち必ず読むつもり。

■秘密警察出身のプーチン大統領が誕生してからロシアは経済停滞から脱出し、好景気にわき、大金持ちが輩出している。一方で、言論は統制され、政府に批判的なテレビは経営者がクビにされ、新聞にも圧力が加わり、「真実」を伝えられなくなっている。独裁国に典型的なことだが、国民の間の貧富の格差が極端にひろがっている。
 ロシアは近年、石油資源など豊富な天然資源をもとに軍事力を強化し、「ロシア帝国」というより「ソ連帝国」の復活をめざしているようだ。日本人の意識にはあまりのらないロシアだが、「プーチン帝国」がこのまま続き強大化することは懸念される。

■中国もそうだが「言論の自由」のない国はじつに困ったものだ。権力は時間がたつと必ずといっていいほど腐敗する。しかし、言論の自由があればいずれ腐敗・不正があばかれ、権力者は権力の座からおりざるを得なくなる。ところが、言論を封殺されてしまうと、多くの国民に不正が目にはいらないので、腐敗は長期間持続する。
 これも独裁者のしばしばやる常套手段だが、マスコミをつかったプロパガンダや戦時中の「大本営発表」のようなことやって国民の目から事実や真実を隠す。さらに秘密警察組織を使って国民を監視下におこうとする。

■インターネット時代になってマスコミの統制も効果を発揮しにくくなったが、それもインターネットが自由に利用できる環境があってこそである。中国ではアメリカのグーグルに圧力を加えた結果、グーグルは「経済」を優先し、中国政府と妥協をし、政府に不利な検索が出来ないようにしてしまった。たとえば「天安門事件」といった単語を検索しようとしても、否定的なサイトはひっかからない。文化大革命なども、ひっかからないし、マスコミも報じない。とにかく「金儲け」至上主義が跋扈しているようだ。その点では、今の日本と変わらない。

■ところでロシアでは大マスコミの経営者はほとんどプーチン賛成派でしめられてしまっている。ソ連崩壊後、マスコミは始めて「自由」を謳歌し、自己主張を果敢にし、政府や社会への批判的な論陣をはったりしていたのだが、プーチン政権の登場以降、言論は相当程度制限されてしまったようだ。
 日本でもマスコミでは「自主規制」がかなり行われているが、週刊誌などはゲリラ的に情報を流せるし、インターネットでは政府や権力者を批判する情報もまだ自由に流すことができる。これも、いつまで続くか保証の限りではないが。
 言論の自由を制限しようとする動きは、芽にうちにつんでおかないと大変なことになる。

■渋谷で仕事の打ち合わせ。ぼくの書いたプロットが面白いとのことで、この企画は99パーセント通ると思うとK氏。時間の余裕があれば原作小説も同時に執筆する予定。
 昼間30度を超えると思われる暑さだった。渋谷図書館に借りた本を返しがてら足を運んだものの、本日休刊日。一瞬げんなりした。駅近くの喫茶店で仕事をし、夕方、カミサンと待ち合わせをし道玄坂付近を歩いていて『プレステージ』という映画が面白そうなので「夫婦割引」で気まぐれに入った。

■19世紀末のアメリカを舞台にした二人のライバル手品師の物語。楽しめるエンターテインメントかと期待したのだが、ご都合主義に満ちており、構成もよくなく、幻滅。人間の入れ替わりの魔術の種が双子であったなど、ミステリーの悪い見本のようなものである。アケデミー賞に二部門でノミネートされた作品だというが、駄作。時間の無駄遣いでしかなかった。
「ハリウッド映画の大作」といった作品にはロクなものがない。かえって「B級映画」のほうに面白い作がある。帰宅してアニマルプラネットでベンガルトラのドキュメントを見つつこれを記す。トラが生きるのも大変だが、トラの餌食になる鹿も大変である。人間社会も、一応のルールはあるものの、こういう「弱肉強食」の世界から脱却できていない。考えてみれば、自然界のルールをもっとも破って好き放題をしているのは人類という動物である。
by katorishu | 2007-06-21 00:38