コラム


by katorishu
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内閣支持率急落。庶民の「心」を読めない指導者

 
7月2日(火)
■朝日新聞によれば内閣支持率が28パーセントに落ちたという。発足時、70パーセントの支持率があったのに、一年未満でこれだけ急落したのは珍しいのではないか。「郵政解散選挙」で自民党が予想外の「大勝」したことで、どうも権力者は何か勘違いをしてしまったとしか思えない。

■民主主義なのだから、国民それも圧倒的多数の、ささやかに暮らしをたてている庶民の感覚から離れたところで、政策は成り立たない。前回の総選挙で、たまさかの幸運で得た議員の「数」を頼みに、強行採決を繰り返す。一方で、数々の政治とカネの問題も噴出しているのに、そちらはお茶を濁す。閣僚に問題が出ても、その場しのぎの発言をして、あとで訂正したりする。外交問題ひとつとっても、一国の指導者として、どうも軽いし危うい。

■安倍首相当人というより、恐らく裏で「振り付け」を行っているに違いない取り巻き(ブレーン)に問題があるのではないか。「教育再生会議」などのメンバーを見ても、どうも「知的なもの」に欠けている。「知への崇敬」の欠如。それは顔や態度におのずと表れるものである。物的に欠乏がある社会には、それなりの緊張感があり、人は普通に生きるために知恵をめぐらすし、自然から多くを学ぶ。学ぶ姿勢を持とうとする。

■日本人は伝統的に自然との調和や自然への崇敬の念をもち、比較的節度をもって生きてきた。戦国時代などは例外で、弱肉強食、殺し合いの世界であったが、それ以後の社会は身分差別などマイナス面は多々あったにしても、総じて「平和裡に」「ゆずりあって」暮らしてきた。(昭和初期の軍国主義時代をのぞいて)

■それがバブル経済とその崩壊以後の中で、「数字」が絶対的尺度であるというアメリカ的な価値観が社会を支配するようになり、「庶民文化」の土壌が根こそぎ絶滅寸前に追いやられ、「弱肉強食」の戦国(ただし直接の殺し合いのない)の時代にもどってしまったようだ。昔の人は「衣食足りて礼節を知る」といった。ところが、最近の日本を見ていると、「衣食足りて傲慢になる」という言葉がふさわしくなっている。特に指導層や富裕層、強大な権限をもった一部官僚の驕りははなはだしい。

■彼らには謙虚さや人に対する優しさがない。それに庶民は怒っているのである。
 内閣への支持率低下は、まっとうな生活をしている庶民の率直な気持ちの反映である。安倍政権はまだ庶民の暮らしの実態や、彼らの憤懣に気づいていないようだ。このままだと、与党は参議院選挙で「歴史的な敗北」をこうむるに違いない。庶民は、ぼく自身もふくめて、ある意味で「愚かしい」が、一方で指導層が思うほど「バカ」ではない。

■日露戦争後の暴動や関東大震災時の朝鮮人虐殺などを思い起こすと、確かに大衆は扇動にのりやすく「無知」な面がある。テレビのコマーシャルがあれほど強い力を発揮するのは、その端的な表れだが、幸か不幸か現在はインターネットの時代である。情報が昔のように「一握りの人間」に独占されていないし、その気になれば多方面からさまざまな情報を手に入れることができる。インターネット上には「ゴミ」のような情報が多いにしても、中には傾聴に値する情報もあり、判断の材料には事欠かない。「小泉チルドレン」の誕生で、与党政治家の中に国民なんてチョロいものといった驕りがあったのではないか。

■複雑な要素がからまりあい、先行き不透明な時代である。政治家ももっと賢くなって「優秀」とされる官僚と互角に渡り合える存在にならないと。原爆投下を「しょうがない」と公式に発言した久間防衛大臣。東大卒の官僚出身でそれなりに「頭の良い(勉強の出来る)人」であったのだろうが、この時期、お粗末きわまりない発言である。あまりにも「お粗末」なので、過日もブログで記したが、安倍政権の支持率を下げるための「隠れた意図」があるのでは――と疑いたくなる。

■あるいはアメリカへの過剰な「配慮」か。政治家の発言には、裏の裏の、そのまた裏があるものである。「意図」がなかったとしたら、自分の発言の「意味」が社会にどういうリアクションを引き起こすか読めない人であることを意味し、国の安全保障の要の省を統轄する大臣としてまったくふさわしくない。
by katorishu | 2007-07-03 04:39