蒸し暑い夜、NHKスペシャル『都市を襲う核攻撃』を見て心が凍る
2007年 08月 06日
■このところ、舞台や落語会、そのほか、いろいろなイベントの案内が届く。いずれも「知り合い」からのもので、出来るだけ顔を出したいと思うのだが、すべてにつきあっていると、自分の時間がなくなってしまう。
予定通り進まない原稿執筆に四苦八苦している状況ですので、「欠席」か「見に行けない」かのどちらかになります。関係者の皆さん悪しからず。またの機会にぜひ足を運ぼうと思っています。
■それにしても、暑い。そうでなくともよく眠れない「体質」なので、睡眠不足になり、当然の結果として脳の働きが鈍い。続けて6時間眠れば、頭がすっきりするのだが、それがなかなかむずかしい。で、一日の予定が大幅に狂ってしまう。
某賞の二次選考の脚本を13本読む件は、引き受けたので読み進んでいるが、いずれも題材が陳腐だし、面白くないと思っていたところ、本日、喫茶店で読んだ中になかなか巧みな脚本があった。珍しく手書きで端正な字で書かれ、才気を感じさせた。
■NHKスペシャルの『都市を襲う核攻撃』を、半分眠りながら見ているうち、目がさめた。核保有国が拡散し、核兵器の製造が容易になった結果、「テロリスト」に核兵器がわたる可能性があり、そうなるとどのような悲惨な事態が生まれるか……と専門家のシミュレーションをもとに構成したドキュメンタリーである。
■なかでも深刻なのが「電子パルス」攻撃であるとのこと。ミサイルに積んだ核弾頭を都市の上空17キロで爆発させると、電子機器などに深刻な被害を及ぼし、都市機能は麻痺する。人間に直接破壊的被害は及ぼさないが、一発で例えばアメリカの半分に深刻な影響がで、電子機器に頼る飛行機は墜落し、パソコンは全滅等々、悲惨な結果になる。「高度爆発」というらしい。これは高度な核爆弾でなくとも出来るとのことで、それだけに「現実性」をおびており、怖い。
コンピュータ化されていろいろのことが「便利」になればなるほど、脆弱性が浮き出て、「弱い社会」になる。大いなる皮肉である。
■世界で現在、この「電子パルス」攻撃に対して国家規模で「備え」が出来ているのはスイスだけであるという。さすがというべきか、スイスでは全国に「電子パルス」攻撃に耐えられる核シェルターを設置してある。
専門家が一致して指摘することは、核攻撃に対しては基本的に守りようがないとのことである。ところで、アメリカのブッシュ政権は「テロリストの核攻撃には備えが必要」だとして「先制攻撃」を主張しているが、キッシンジャー元国務長官はこの政策の危険性を指摘している。最もなことである。
■冷戦時代は核の「抑止力」が機能していたが、今や核の抑止力はなく、人類を悲惨な事態から救うためには核兵器の廃絶しかないと、番組はしめくくった。
核攻撃など「まさか」と思う人がいるかもしれないが、考えてみれば、01年9月のアメリカでの同時多発テロなど、誰も予想していないことだった。
■何が起こっても不思議ではない。そんな恐ろしい時代をわれわれは生きている。「現代のローマ帝国」アメリカが率先して核兵器廃絶に踏み切れるかどうか。その可能性は少なさそうなので、早晩、未曾有の悲劇が現実化する可能性が強い。唯一の被爆国、日本が存在を強くアピールして核廃絶のイニシアティブをとるべきだと思うのだが。
■多くの国民は現在の「生活水準」を落としたくないので、今後ともアメリカ追従政策が続き、核拡散にブレーキはかかりそうにない。「電子パルス」攻撃を受けると、100年前の生活に逆戻りするとのことである。人類はそこまで戻って、やり直すしかない所まできている。