安倍首相は退陣の機会をうかがっているようだ
2007年 09月 09日
■昨日ほどでないにしても、かなり暑い。秋らしい日が短く、夏から一気に冬になるといった気候の変化も予感される。日本文化の特色である「玉虫色」というか、暑くも寒くもないグレイゾーンの「中間部分」が、気象からも消えてしまいそうだ。かつて日本の強みでもあった「中間層」も消えようとしている。富者か貧者かに二分し(といっても圧倒的多数は貧者だが)、「中流階級」「中産階級」が減っていく傾向は、文化の担い手も減っていくことを意味し、憂慮すべきことである。
■安倍晋三首相は9日午後、シドニー市内のホテルで記者会見し、インド洋での海上自衛隊の給油活動の継続問題で、民主党をはじめ野党の理解を得るため職を賭して取り組んでいき、職責にしがみつくということはない、と語ったという。「海自撤退」という事態になれば、責任をとって退陣する考えを示したものだそうだ。
■自民党内でも指導力をほとんど失っているようであり、本心は投げ出したい気分なのだろう。ああいう状況に置かれたら、普通はそう思う。ただ、退陣論がうずまくなか「頑張る」と大見得を切って走り出した手前、なにか適当な「名目」がないと放り出すこともできないのではないか。恐らく週明けにでも発表されるであろう世論調査の結果はかなり厳しいものになると予想される。
■思い切って解散総選挙に出るくらいの英断というか勇断が欲しい。安倍首相の父親の晋太郎氏を知る人物からも「所詮はお坊ちゃんだし、首相には無理」といわれてしまう人である。人間はとってもいいのだと思う。それは顔にでているし、一緒に食事などしたら楽しい人だろう。しかし、江戸時代の殿様ではあるまいし、一国の指導者は「人間がいい」とか「感じがいい」とかでつとまるものではない。
■現代のような複雑な社会をひっぱっていくには、強い意志と政治哲学、指導力、権謀術策等々をあわせもち、さらに「対人コミュニュケーション力」や「戦略的コミュニュケーション力」を臨機応変に発揮できる器でないと無理である。
■そもそもこういう人を、選挙の顔になるとして総裁に選んだ自民党員のセンスを疑う。よほど選挙民をバカにしていないと、こういう選択は出来なかったはずである。
こういう判断ミスをした政党は一度下野して冷や飯を食べたほうがいい。すると見えてくるものが必ずあるはずである。逆境を味ったことのない人間は、どこか甘い。人間に対して甘い見方をする人間は、一国の指導者どころか会社などの組織の長にもむかない。
■週明けからの国会の審議に注目である。主権在民が国是であるのだから、国民のほうに目が向いていない議員はノーサンキューである。個々の議員の発言を注視したい。(といっても、幸か不幸か今のところ執筆稼業が忙しくそんな暇はないのだが)
■アメリカ経済は来年2月ごろ失速する可能性が高いようだ。アメリカの指導層からもそんな声が漏れてきている。北京オリンピック後の中国もかなり危ない。日本はこの2大国に深くかかわっている。それだけにこの2大国の「失速」が、「大津波」となって日本を襲う可能性も強い。「そのとき」にそなえて、臨機応変、柔軟に対処できる「決断」と「実行力」をもった政府にしておかないと、日本は本当に危ない。