コラム


by katorishu
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最後まで「空気」の読めなかった安倍首相

 9月12日(水)
■午後2時ごろ、六本木の放送作家協会事務局に顔を出すと、NHKテレビが安倍首相の突然の辞任を報じていた。「やっぱり」と思った。過日、テロ特措法について「職責を賭けて」と海外で語っていたときから、早い辞任が予想され、このブログでもそう書いたが、まさか所信表明演説をした直後に辞めるとは思わなかった。議論から逃げた「敵前逃亡」といわれても仕方がない。

■「武士の作法」からいえば、武人とは対極にある人だ。こういう人に「美しい国」などといってもらいたくないものである。どうも安倍首相は場の空気が読めない人のようだ。「タイミング」というものについて生来音痴なのかもしれない。ときおり、このタイプの人がいて、周囲はしばしば迷惑をする。ぼくのまわりも、もちろん、いる。

■安倍首相が辞めるなら参議院選挙で大敗した直後である。空気の読める人なら、当然そうする。しかし、大きく判断ミスをして、やめるときまで「美しくない」姿をさらしてしまった。この方は不祥事議員の問題でも、いつも対処が後手後手にまわっている。リーダーとして必須の素質である「時宜を見る才能」つまり「決断力」に欠陥があるのである。一国の指導者としては、まったく適さない人だ。
 学者らのブレーンに「美しい国」というキーワードを吹き込まれ、縁者のすすめもあって総裁選に出て、さらに自民党員の軽薄な思惑で選ばれてしまった。

■人間はいいのだろうが、所詮、総理の器ではない人が、たまさかの幸運でそのポストについたということである。器でない人が大役につくことの愚を、多くの国民は具体例として見せてもらったのではないか。政治家を人気とか顔がいいとか、良さそうな人、という基準で選んではいけない。

■それにしても、このタイミングで辞めるとは驚きである。もしかして、さらなる大きなスキャンダルに蓋をするために辞めたのでは……と勘ぐってしまう。一部週刊誌が税の問題で安倍首相の周辺を調べているという。細川元総理はスキャンダルを封じ込める代償として辞めたという噂がまことしやかに流れた。
 いずれにしても、責任放棄としかいいようがない。細川元総理のときも感じたが、「名門の出」などの理由でリーダーを選んではいけないと改めて思う。とくに「危機の時代」は、絶対にこの種の人をリーダーに選んではいけない。戦前、名門出の近衛首相も対中国政策で大きく政治的判断をあやまり、日中戦争をやめるタイミングを逃してアメリカとの戦争への道をつくってしまった。

■今度の辞任劇を見ていると、安倍総理がむしろ可哀想に思えるほどだ。生来、人が良いので、「岸元総理の血が流れているし、日本を変えるにはあなたしかいない……」等々、取り巻き連中の甘言にのってしまったのだろう。ぼくは、安倍晋三氏個人より、彼をおだてあげ、その気にさせてしまった取り巻きに、怒りを覚える。

■「昭和の妖怪」といわれた海千山千の岸信介とは、頭脳はもちろん、胆力も気力も戦略も、まるでちがうのである。安倍氏が退陣したあと、今度は吉田元首相の孫が総理候補として浮上しているが、この方も「世襲」議員で、苦労知らずであることにかわりはない。漫画しか読まないと以前週刊誌が報じていた。この人も人は良さそうで、一緒に酒を飲んだりすると大変楽しい人ではないか。

■しかし、それと一国のリーダーとはわけが違う。来年、アメリカ経済は相当悪化すると思われるし、「麻生総理」で大丈夫なのか。一時的に支持率はあがるであろうが、「一言多い」性格が致命傷となり、なし崩し的に解散に追い込まれるのではないか。大して根拠はないが敢えて予言しておきたい。
by katorishu | 2007-09-12 21:57