コラム


by katorishu
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サブプライム・ローンはアメリカの「終わり」の「はじまり」? 

 9月19日(水)
■アメリカの住宅ローン「サブプライム・ローン」は、世界経済に今後かなり深刻な事態をもたらしそうである。過日、このローンのこげつきによって世界の株価が暴落した。あわてたアメリカの金融当局は膨大な資金を市場に投入し、パニックはまぬがれた。日本をはじめとする先進国の金融当局も相当額の資金を投下したが、あくまで「急場」をすくっただけではないのか。

■金融には素人で株も買ったことのない人間だが、先行きが懸念される。本日、テレビで次のようなケースを報じていた。月収17万円のアメリカ人がプールつきの住宅を購入し、当初は比較的低金利であったのが、何年かたつと金利がはねあがり、ローンの支払いだけで月に23万になるという。これで破綻しないほうがおかしい。
 表面「裕福そう」に見える多くのアメリカ人は「大借金王」であるようだ。

■バブル崩壊直後、日本でも土木建築業界に金をまわすため、比較的簡単に組める住宅ローンを提供した。それまでマイホームを購入できなかった「中低所得層」の需要を掘り起こそうとする政策で、若い層を中心にこのローンを借りてマイホームを買った人も多い。
 ところが5年ほどたつと、金利があがる。給料の上昇がのぞめないまま、ローン返済額があがり、やがて家計が破綻、マイホームを手放すケースが急増した。

■プライム・ローンはそれを大規模に行ったようなものである。アメリカの金融界ではリスクを分散させる意味もあって、ローンを債権やファンド化することによって細切れにして、海外の投資家などにも販売した。そのためアメリカ国内での破綻が海外の金融や投資家を直撃したのである。グローバリゼーションのもたらした「悪い」結果である。

■サブプライム・ローンの問題が顕在化してくるのはじつは来月から半年くらいの間であるという。心あるエコノミストは相当懸念している。日本では大都会を中心に「景気が回復」し、これからようやく地方や中小零細関係者などに、その「恩恵」の余波がやってくるかと「期待されて」いた。そんな中、サブプライム・ローンの衝撃波が日本を直撃すれば、「余波を期待していた」層はあっさりと切り捨てられる。

■いやな予感がする。この20年ほど、なにもかもがアメリカ一国を中心に動いてきた。経済も文化も、もちろん軍事も。例えば、「対テロ戦争」。ブッシュ政権の始めた戦いだが、テロの撲滅どころか、テロの拡散につながっている。イラク戦争も泥沼で、出口なしという状態である。「美しい国」をかかげて登場した戦後生まれの総理も「破綻」してしまった。

■とにかくアメリカにべったりとつきあってきた日本。結果として「幸福である」と感じる人が多数派であるなら、結構なことかもしれないが、最近はどうも「幸福感」のうすい人が多い。生き甲斐をもちにくい社会になってしまったのである。今と未来について不安に思っている人が圧倒的多数ではないか。そういう社会が「良い社会」であるはずがない。

■なんでも「数字」に換算して、これを唯一の尺度にして世界をきりまわしていこうとする考えが、破綻しつつある証拠でもある。この価値観を地球規模にひろげたのは、世界の超大国「アメリカ」である。今、アメリカの終わりの始まりが始まった、といったら、極論すぎるだろうか。では、何が始まろうとしているのか。隣国、中国の屋台骨も相当怪しい。北京オリンピック後が、心配である。ロシアも、ソ連帝国にもどりつつあるようだ。

■環境問題も悪化する一方である。前を見ても後ろを見ても、上も下も、どんづまりの様相を呈してきた。それでも人は生きていく。生きようと努力をする。努力の積み重ねの中から曙光が見つかるといいのだが。11月3日(土)22時より放送の、理学療法士を主人公にしたラジオドラマ『生き直す』の脚本(NHK・FMシアター)には、そんな思いの一端をこめたつもりです。
by katorishu | 2007-09-20 01:37