守屋前防衛次官の証人喚問中継を見た
2007年 11月 15日
■本日は比較的早く(?)起きたので午後1時からはじまった外務防衛委員会のテレビ中継を見た。防衛省前次官の守屋氏の二度目の証人喚問である。過日の喚問で守屋氏は宴席に「複数の政治家」が同席したと証言したが、その名前はいわなかった。本日、その政治家とは誰であったのかという民主党浅尾議員の質問に対して、当初渋っていたが結局、久間元防衛大臣と額賀元防衛大臣の名前をあげた。
■このとき、カメラのフラッシュが一斉にたかれ、空気が動いたようだった。週刊誌等では早くから名前が流れていたが、本人が「と思う」という留保をつけたものの、明かすのを渋っていた名前をあげた意味は大きい。なにも問題がないのなら、最初から名前をだせばいいのである。省庁の幹部が政治家と意見交換すること自体は、当然のことで、何も悪いことではない。ただ、それが職務権限のある関連業者が設定した舞台で、業者が一緒となると、問題である。
■守屋氏へのゴルフ接待は300回を超え、1500万ほど費用をだしたと、当の山田洋行の社長が証言した。以前、ぼくもゴルフをやったが、しばしばビジネスがからむ姿を垣間見るうちイヤになった。仕事のからむコンペだからつきあってくれといわれ、5万円の会費を払って参加したコンペがあったが、別室でたまたま「政治家秘書」や「政治ゴロ」と思われる人たちと一緒になった。そこで、どこの政治家だったら、これだけのカネを動かせるとか……数人が具体的な名前をあげて話していた。ひどく生々しい話であったと記憶する。聞こえないふりをして聞いていたが、なんだかいやな気分になり、コンペが終わって行われたパーティの途中で知り合いと共に席をたった。
■一介の脚本家に誰も「接待」などしないので、プレーの際にはもちろん自腹で払ったが、バブル期のことで1回いくと4,5万円はかかる場合が多かったと記憶する。ほとんどはコンペであったが、とにかく早朝からのプレーなので、ぼくの場合極端な睡眠不足であり、しかも丸一日がつぶれ、ストレス解消どころか、ストレスになってしまう。
■おつきあいで月に2回ほどいったものの、ある時期から時間もお金ももったいないので、やめた。座業であり、体を使うのでゴルフはそれなりに面白いのだが。今でも時々誘われ、プレー代も安くなったし……といわれるが、ストレスになるので、とお断りしている。以前、映画関係者から聞いたことだが、ゴルフを関係者としないと仕事がこないので始めた――という人が案外多い。「好きで始めたわけではないけど、やっているうちに面白くなった」と述懐した音楽家もいた。
■仲間作りや心から好きでゴルフをしている人には、今回の守屋ゴルフ接待は不愉快なことであるに違いない。こういう事件が起きると、ゴルフ・イコール・接待という連想が生まれてしまう。ひと頃、ゴルフは「紳士のスポーツである」といった言い方をされた。その言葉を聞いたとき、ぼくはイヤな感じがしたものだ。スポーツにフェアプレーは必要だが、べつに「紳士」がやるべきものでもない。「紳士」などを強調する人に限って、実態はそうでないケースが多い。
■防衛費関連に投下される税金には依然として「闇」の部分が多い。質問者の言葉は週刊誌などで報じられている内容で新味はなかった。機密に防御されているので、なかなか本当のことは表に出てこないのだろう。喚問で守屋氏は「自分は特異なケース」であるといった意味のことを話していたが、次官が堂々と倫理規定に違反する行為をこれだけ続けられたことの背後には、そうした行為を許す土壌があったと考えられる。現場で汗を流す自衛官の多くは、生真面目であるはずだが、トップが腐っていたのでは下まで腐敗が伝染していっているのではないか。
■以前、海上自衛隊の佐官クラスでアメリカのウエストポイントで教官をしていた人たちと歓談したことがあるが、みんな気持ちよく正義感にあふれた人たちだった。守屋氏は喚問で、そういう人たちに申し訳ないと涙を浮かべて謝ったが、あれだけの「接待攻勢」を受ければ、いずれ表沙汰になるだろう。そういうことに気づかなかったのだろうか。そうだとしたら、国の安全保障のトップにいる人間として「情勢判断」の出来ないことを意味する。アメリカの軍需産業がからんでいるので、闇の解明は容易ではないだろうが、特捜の切り込みに期待したいものだ。