コラム


by katorishu
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吉兆の偽装、ブランド志向社会の当然の帰結

 11月16日(金)
■吉兆の擬装表示問題が話題になっている。「高級ブランド」を売り物にした商品や店は、たいてい「実態」を虚飾しているものが多く、ぼくは基本的にその類のものは買わないし、入らないことにしている。もちろん、ブランドに誇りをもち長い間、職人的な腕で作ってきたものには、なるほどと思わせるものがあり敬意を表するが。どうも最近の「ブランド志向」には底の浅いものを感じる。

■自分の五感に自信がもてないので、「第三者」などが評価をくだした「ブランド」に判断をゆだねてしまうのではないか。世の中見渡せば、ブランドのオンパレードである。そもそもブランドなどという言葉がいけないのかもしれない。その品ならではの「個性」といえばいいものである。人間にも「あの人は東大卒」だとか「××物産社員」だとか、ブランドというレッテル張りをしようとする。人の場合、ブランドと内実とは一致しない場合が多い。

■ブランドで飾り、ブランドものを食べ、ブランド地区に住むと、一段と上のランクにあるような錯覚に陥るのだろうか。ブランドもので装って背伸びをしている人を見ると、コンプレックスの塊のように思えてしまう。差別意識はブランド志向と裏腹のものである。従ってブランド志向が大きく根をはっている社会は差別の強い社会といってもよいと思う。

■女優の三田佳子の次男でタレントの高橋某が、三度目の覚醒剤所持で逮捕されたという。テレビのワイドショーを見ていないが、大きくあつかわれたらしい。またぞろ三田佳子に女優活動を自粛するのかどうかといった問いが発せられたようだ。27にもなる息子のことである。親と子は別の人格であり、罪を犯した本人がつぐなえばいいのである。

■俳優の子供が俳優に――というケースをよく耳にする。一部成功している家族もあるが、多くの場合うまくいっていない。ぼくの知っている某俳優など一家四人が役者である。息子が俳優を志望していると聞いたとき、やめたほうがいいのでは……と母親のほうにいったことがある。「わたしもそう思うんですけど、本人が」ということで役者への道を歩んでいるが。

■亡くなった某有名女優と某監督の二人の息子もかつて役者になった。当初は両親の「威光」でドラマや映画に端役ながら出ていたが、もともと素質がないので挫折。今、40前後の年になる息子が高齢の監督の悩みの種になっている、と最近耳にした。それ以外にも、「オタクの息子さんも役者志望だったのか」と驚くことがある。スポーツ選手など典型だが、才能で勝負する分野では世襲はほとんどうまくいかないといっていいだろう。

■最近、政治家も「世襲」が増えていて、こちらは「地盤」もカネもあるので当選する確率も高い。彼らが多数当選し、一人前の「政治家」の顔をしているということは、政治が今や「資質」や「能力」がなくとも、つとまるという安易な職業になっている証拠かもしれない。じつは日本の政治の主導権を握っているのは「学校秀才」の官僚である。だから政治家は上におぶさっていればいいわけで、たとえ無能でも勤まるのである。最近「有能」といわれた官僚の劣化も相当程度進んでいるようだ。すでに「学校秀才」では対処できない事態に至っているのに、長年かかって築き上げてきた土壌は腐臭をはなちつつもまだまだ堅固である。
by katorishu | 2007-11-17 01:19