コラム


by katorishu
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ドキュメンタリー映画「靖国」を見た

 12月19日(水)
■韓国の大統領選挙で保守系のイ・ミョウン・バク氏が当選した。彼のことを「経済大統領」というらしい。多くの国民の関心は「いかに食べるか」である。国民が「食べていける」基盤をつくるのが政治の最大の役割である。ノ・ム・ヒョン大統領は韓国社会を日本以上にひどい「格差社会」にしてしまった。

■左派、リベラルをうたう大統領が、ひどい格差社会をつくっては、国民の支持を失うのは当然だろう。対外政策で、旧政権とどのような違いを出してくるか。注目である。
 京橋の美学校の試写室でドキュメンタリー映画「靖国」を見た。中国人の李監督作品でカメラはぼくの知人の堀田泰寛氏。現在、90歳をすぎてなお「靖国刀」とよばれる日本刀を作りつづけている刀鍛冶を中心に、終戦記念日に集まった右翼や遺族、さらに台湾人、父親が靖国に祀られることに反対をしている僧侶などが登場し、それぞれの立場をのべる。

■コメントなどを一切さけ、靖国に集まる人々の姿をそのまま切り取りつないでいく。見る人によって、そこから浮かび上がるテーマもちがってくるだろう。恐らく時間や経費の制約がきつかったのだろう、もうすこし人物を「フォロー」する描写が欲しかったが、中国人監督としては、これだけねばり強く撮った意欲は買える。

■「ノンフィクション作家」としては、「靖国刀」を作り続ける老刀鍛冶の関係者などにも取材し、彼の過去をもっとあぶりだせば分厚い作品になったのにと思った。監督の質問にどう答えていいかわからず沈黙する刀鍛冶の顔をずっととり続けたシーンは、極めて興味深かった。アメリカ国旗をかかげ小泉支持を訴える、不動産の仕事をしているという「妙な」アメリカ人が登場する。これも面白かった。彼のその後を追跡取材すれば、さらに面白いものが出てくるのにと思ったりした。(その試みはしたのでしょうが)

■マイケル・ムーア監督のように、監督が画面にもでて関係者に切り込む手法をとればさらに興味深い内容になったと思う。中国国内で上映される作品であり、恐らくそのことも念頭にあったのだろう。撮影して、「カット」した部分はどうであったのだろう、とそっちのほうにも興味がいく。

■ドキュメンタリーは編集次第で、良くも悪くもなる。後半の古い写真に、しばしば昭和天皇が登場する。靖国との意味づけが、靖国神社についての知識をあまりもたない人に、どの程度わかるかどうか。聞いてみたいものである。
 この映画について週間新潮が「反日映画」に文化庁が芸術振興資金として750万円を出しているのは、おかしい――との記事を掲載したとのことだが(直接読んでいない)、「反日映画」とは思えなかった。
 限られた時間と経費の中で「靖国」というむずかしい問題に真っ向からぶつかっていった監督の姿勢は興味深い。多くの人に見て欲しいドキュメンタリーである。
by katorishu | 2007-12-20 03:29 | 映画演劇