コラム


by katorishu
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仕事納め、とはならない。ブット女史暗殺の衝撃は続く

 12月28日(金)
■「仕事納め」であるが、中小零細経営者やフリーなどは「仕事真っ最中」のはずである。四苦八苦で年をこせるかどうかの瀬戸際にある人も多いのではないか。この10年ほどで、ほんとに貧しい人が増えている。倒産する可能性の少ない大企業の勤め人や官公庁に勤めている人には実感がないかもしれないが。
 こちらは、はかどらない原稿と四苦八苦で、年明けに渡します、などという苦しい言い訳。

■「佐藤立志のマスコミ日誌」というブログが戦前の社会主義者、山宣こと山本宣治の演説の言葉を引用している。「いくら子どもを節約したところで、貧乏そのものがなくなるわけではない。一番大切なのは、安心して子どもを産める世の中にすること。働く人々の生活がもっと楽になるように社会のしくみを変えることが必要である」というものだが、まるで今の日本のことをいっているようだ。

■パキスタンのブッド元首相の暗殺についてCNNが現地からの実況中継をまじえ長時間にわたって報道していた。一時間ほど見ただけだが、アメリカとくにブッシュ政権にとって、この暗殺事件がいかに衝撃であったかがわかる。東京証券取引所の株価も、この事件の影響を受け大幅安で取引を終えた。来年、この事件がどのような「余波」を世界にあたえるか。「津波」のようにならないことを切に望みたい。

■この事件で核保有国パキスタンの政治は流動化する。過激なイスラム原理主義勢力は一層、活動を激化させるに違いない。「アメリカ式の秩序」を破壊することが彼らの当面の目標なので、必ず勢いづく。インド・パキスタン情勢もおかしくなりつつあり、それは中央アジア諸国、さらにはロシアにも影響する。こういう時代こそ臨機応変に対応できる外交官が必要なのだが、対ロシア外交にとって重要な人物の佐藤優氏など未だ外務省では「休職中」としている。

■以前、日本にいるパキスタン人を取材したことがある。9,11事件以前のことだが、日本に住むイスラム教徒に取材して本にしようと思い、某社のM編集者に話をもちかけ、渋谷区にあるイスラム寺院(イスラミック・センター)などをM氏と共に取材した。大成建設の協力を得て新築されたモスクは壮観だった。ここの理事のH氏は中国人で回回といわれる回教徒で、H氏の父親の件で以前取材したことがあった。

■文化大革命のとき回教徒は大変な迫害をうけた。当時北京大学の学生であったH氏はアラビア語ができたので、毛沢東語録をアラビア語に翻訳するチームに加えられ、西太后がつくった「宮殿」(イワエン)で他の翻訳者たちと共同生活し、迫害をまぬがれたという。赤い本の毛沢東語録は当時、世界各国語に翻訳されていたものだ。

■H氏の協力なども得て、イスラム教徒の視点で日本を切り取ったら面白いのでは――とM氏に話し、「イスラムが国際政治の焦点になるから意味のある本」と力説したのだが。企画会議でボツになったのかどうか、そのままになってしまった。ほどなくして9,11同時多発テロが起こった。その直後、M氏にあったとき、「あのとき、出していればベストセラーになったのに」と残念そうに話していた。

■9,11事件が勃発した後は、逆にぼくの中で熱がさめてしまっていた。というより、まったく想像もしていなかった衝撃的な出来事であり、どう判断してよいかわからず、ぼくの手にあまると思った。依然としてムスリム(イスラム教徒)が国際政治の焦点となっている。それと、やはり世界の金融を牛耳るユダヤ人が焦点である。さらにイスラエルの存在が、今後も引き続き国際緊張の火ダネになりつづけるだろう。

■本日、ユダヤ系アメリカ人のパメラさんから、ご主人(日本人)の転職にともない東京からハワイに移り住んだとの葉書をいただいた。ユダヤ人問題で国際的に有名になった杉原千畝氏のことで、当時、研究者であった彼女から接触があり若干話をした。ぼくの作演出の舞台も見にきてくれた。その後、彼女はユダヤ人問題を学位論文としてまとめ出版もされた。本を送っていただいたのだが、英語の論文でもあるし、まだちゃんと読めていない。毎日感じることだが、時間の経過があまりにも早すぎる。
by katorishu | 2007-12-29 00:44