コラム


by katorishu
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働く人の数だけ企業があるイタリア

 1月22日(火)
■飯田橋で編集者と「情報交換」した。帰路、駅の売店の新聞の見出しに「東証続落」「世界同時株安」の文字が躍っている。去年から懸念されたことが、現実になってしまった。サブプライムローン問題は来月から問題噴出――という見通しなのに、早くもこういう数字が並ぶ。

■株価の動きには複雑な要因がからんでおり、ぼくのような素人にはわからないことが多いが、デジタル化、インターネットの普及によって、「数字」が国家の制御をこえてしまったのではないか。現代の恐竜のように暴れ回るイメージがつきまとう。ところで、池田信夫氏によれば、資本主義の本質は「額に汗して働く」ことではなく、カーズナーのいうように、「だれも知らない情報を見つけて鞘をとる」こと――であるという。

■以上の意味で、「利潤の出る取引はすべてインサイダー取引だといってもよい」とも池田氏はいう。NHKのインサイダー取引問題に関して、元NHK職員の池田氏のブログには万を超える数のアクセスが集中したらしい。それはそれとして、今のところ、政治のシステムとしては資本主義が「よりベター」なものということになっているが、上記のように割り切られると、「職人文化」こそ日本の誇りと思っているぼくには少々引っかかる。

■職人を大事にする国のひとつにイタリアがある。イタリアは周知のように慢性的な国家経済破綻状態で、この点では南米諸国並であるが、倒産はせず、イタリア人の多くは陽気に生活を楽しんでいる。そうして、ファッションやデザイン、食糧などで斬新なアイディアを産みだし、世界にイタリアの存在感を示している。理由のひとつとして雑誌「選択」は、2000万を超える「法人」の多さをあげる。イタリアの人口は6000余万人なので、「労働人口と照らし合わせれば、働く人の数だけ企業が存在する」といってもいい。

■企業の大半は一人会社か家族経営であるが、こういうところから世界に通用する数々の製品やファッションが「職人技」で生み出されているのである。06年の世論調査によるとイタリア国民の9割強が「家族が一番大切」としている。「家族を大切にする職人」これはそのまま、昭和30年から40年代くらいまでの日本社会に通じる。日本と違うのは、付和雷同がすくないということである。

■イタリアでは人の数だけ意見があり、社会は常に混乱している。しかし、違いがあるからこそ健全という精神が生きているのだそうだ。そこからイタリア伝統の個性的な創造力が生まれるのだろう。日本の目指すべき方向は、こっちのほうではないのか。「人」より「数字」を礼賛するアメリカ主導の「市場経済原理主義」がいろいろなところで破綻を見せている今、日本の目指すべき方向について、イタリアが恰好の指針をあたえてくれている。

■「サヤとり」の成功者、楽天の本社が最近、近所にうつってきた。「楽天タワー」というビルを建て、その中で3000人が働いており、ビル内にある社員食堂は無料とか。「結構豪華なんじゃないですか。一度食べてみたいもの」と楽天ビルのある品川シーサイド内のイオンの地階で、一杯300円前後のうどんをすすっていた「零細企業」従業員かと想像される青年が話していた。隣のテーブルで食べているこちらの中身も想像されるといったもの。
by katorishu | 2008-01-23 00:32