日本の変死体の検視体制はお粗末きわまるらしい
2008年 02月 01日
■ニューズウイーク日本語版、2月6日号が「変死体は語る」という特集をしているが、日本の変死体の検視体制は、まことにお粗末で相当数の犯罪が葬り去られている可能性が強いという。
日本では年間100万人が死亡し、昨年はそのうち15万人が変死として発見された。ところが死因特定のために解剖されたのはわずか9%にすぎないという。
■人員不足もあり06年に例をとると実際に検死官が変死体の調査に出向いたケースは全体の1割であった。それ以外は、医学知識のない素人の警察官が、法医学の知識に乏しい一般開業医などに立ち会いを求めて検視をしているのだという。
■他の先進諸国では考えられない状況とのことで、例えばオーストラリアやイギリスでは、変死体が発見された場合、死因の特定を専門とするコロナー(検死官)が変死体をCTスキャンで調べるなど徹底した調査を行う。
■驚くべきことだが、先進国には存在する「体系的な検視制度」が日本にはないとのこと。「変死体はまず他殺であると考え、ひとつひとつ可能性を消去していく」のが先進国の「常識」なのに、日本はあまりにお粗末である、とニューズウイークは強調する。
■日本の場合、人材不足は深刻で、司法解剖ができる法医解剖医は、ほとんどの県で一人か二人しかいないらしい。また、日本では死後数日で死体が火葬にされてしまうため、「犯罪が火葬と同時に永遠に葬られてしまう」とカリフォルニアのロサンゼルス群検視局長をつとめたトーマス・野口名誉教授は懸念する。
■「世界一安全な国」などといわれた日本だが、変死体の検視ではお寒い状況で、どれほど多くの殺人が「火葬と同時に葬りさられている」かわかったものではない。そもそも殺人があったとして、殺人と認定されないのだから、殺人犯の検挙率に反映しない。殺人を殺人と認定されず警察がなんの捜査もしないとしたら、これが「安全な国」などといえはしない。
■それなりに権威のあるニューズウイーク日本語版が特集にしている記事である。関係者はすぐにでも対策を考えないといけないのだが……。なにより多くの国民が、こういう事実を知らないということが、問題である。
■本日は久しぶりにリュックを背負ってよく歩いた。といっても、計1時間くらいか。連載原稿や特集の原稿の執筆等々。道を歩いていて思わず中華料理屋などの店内をのぞいてしまう。餃子問題で、日本のマスコミは騒ぎすぎと中国の一部メディアが批判しているが、食べ物や環境は命が密接にからんでいる。注意しても注意しすぎることはないし、こういう事態になれば声を大にして、警戒を呼びかけることが、今後の似たような事件を防ぐことになる。
中国メディアはごく簡単に報じているだけ、という報道が逆に気になる。