コラム


by katorishu
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出版社アスコムの経営陣が夜逃げ?

  2月25日(月)
■中堅の出版社「アスコム」の経営者が夜逃げをしてしまったようだ。「ためしてガッテン」や「英語でしゃべらないと」などNHK関連の本や田原総一郎氏や松山千春氏らの本をだしている出版社だが、21日ごろから会社に連絡がとれなくなっているという。

■取引関係のある編集プロダクションなどは200社で、関係するライターは400人もいて、みんな不安にかられているそうだ。アスコムはアスキーの子会社であったのだが、アスキーの一般書の部局が分離独立することで設立されたという。夕刊フジによれば、従業員は43人で、07年3月期の売り上げは前期比14%減の15億1000万円であった。

■当期は赤字に転落したとのことだが、夜逃げとは穏やかではない。出資者に見切りをつけられ資金をひきあげられたのでは……という噂が流れているという。過日、草思社が倒産しているし、出版不況は相当深刻である。

■複数の出版社にぼくの原稿もいっているが、出版の予定がのびのびになっており、一瞬厭な予感を覚えた。インターネットなどのメディアの出現で本を読む人が減ったうえ、少子化で若者が減り、しかも多くの若者が活字を以前ほど読まなくなっている。そのことも本が売れないことの一因だが、やはり携帯等の普及が最大の理由かもしれない。

■高校生でも携帯の料金に月1万から3万円払っている人はすくなくない。それだけ携帯に費やせば、ほかにまわすお金がなくなる。さらに一日平均3時間も携帯をぴこぴこしていたら、本を読む時間もなくなってしまう。

■日本全土で携帯に費やされるお金と時間の総計は膨大で、天文学的な数字になるだろう。思考力を高め知識を増やす読書に費やす時間の減少は、将来的に日本社会にとって大きなマイナス要因となるのではないか。過日のブログでも触れたが、脳が新鮮でいろいろなものを吸収できる時期に、脳を鍛えることがどれほど大事であるか、脳科学者でなくともわかるはずである。

■中高生が携帯に一日3時間以上を使い、月に万単位のお金を使うなど、愚の骨頂である。お年寄りで暇で暇で仕方がない人なら、日に何時間携帯やテレビで時間つぶしをしようが、「どうぞ」と思うだけであるが。

■IT関連の事業を経営している「中小零細企業主」の記す「木走日記」が面白い記事を載せている。木走氏の会社で新しく社員を募集した。40歳のIT関連の「経験者」が応募してきたが、能力テストで「正社員」としてのスキルに達していなかった。本人の希望もあり、それではと「非正規雇用」として3ヶ月の期限で試験的に働いてもらったところ、技術力で期待できるものをもっていなかった。そのため、当初の3ヶ月でやめてもらうことにした。ところが、本人からの申し出で更に三ヶ月働いてもらった。

■結果は同じで期待する能力を発揮できなかった。で、やめてもらったのだが、当人からメールがきた。その趣旨は「正社員希望で入社したにもかかわらず、半年もパート雇用で使われ、あげくに一方的に解雇された、しかるべき公的機関に相談して法的な対処をするつもりだ」とのこと。
 驚いた木走氏は、すぐに関連資料を鞄につめて、池袋の労働相談センターに事の経緯を説明に行った。結局、40歳の非正規雇用者は、法的な対処を引っ込めたとのこと。

■確かに「非正規雇用」を「正規雇用」にすることは大事なことだが、能力のない人を正規雇用として傭ったりしたら、大企業や官庁ならともかく零細企業ではつぶれる原因になってしまう。朝日新聞の社説を批判する形で、木走氏は論理展開しているのだが、一定レベルのスキルをもたない人がふえていることも、労働問題を難しくしている。
 いくら真面目に一所懸命働いても、「結果」を出せない人がいる。能力で勝負する「フリーランス」など、いくら当人が「死ぬほど努力して」も、発注側の期待の水準に達しなかったら、「お引き取り願う」しかない。それが「現実」というものである。

■フリーターや非正規雇用者の中には、残念ながら「水準に達しないスキル」の持ち主も多い。右肩上がりの成長の時代なら、そういう人を「正規雇用」として雇うことも出来たのだろうが……倒産してしまっては元も子もない。
 いろいろと考えさせられる問題をふくんだブログ記事である。木走氏のブログは以下のURLです。
  http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/
by katorishu | 2008-02-26 01:37