製本業者の家族5人殺傷事件。深刻な出版不況の象徴
2008年 03月 28日
■脚本アーカイブズ準備室で、「報告書」の発送作業を5時間近く。交通費程度のでるボランティアである。最近、ボランティアが多い。本来の仕事である執筆でもボランティア料金の原稿が多い。世間に少しでもお役にたてば……という気持ちがあるのだが、本音をいえば、「まっとうな料金」もいただきたいもの。
■出版不況の深刻さが続く。それを象徴する事件が本の町、神田神保町近くでおきた。小石川にある製本会社の経営者が仕事が急減したことから悲観して、一家5人を殺傷したという。長年の得意先の会社が土地を売ってどこかに転出してしまい「得意先を失った」と加害者の社長は嘆いていたという。
■出版不況はこの業界でも、真っ先に末端の作業所にしわ寄せがいく。発注の単価がきりさげられたばかりか、発注そのものがなくなり、先行き悲観したのだろう。
パソコンや携帯電話で読むのもいいが、やはり本です。本でなければ、得られないものは実に多い。国民の多くがもっと本を読めば、かならず日本は再生する、とぼくは本気で思っている。
それにしても、製本業者の事件は哀しい。一家惨殺の本当の原因はまだはっきりはしないが、いたましくて、胸がつまる。
■他の家族まで巻き添えにしなくてもいいだろう、という思いはあるが、ぎりぎり追いつめられていたのだろう。本人は真面目な職人肌の人であったようだ。真面目で融通の利かない人ほど、追いつめられると暴発してしまう。
生来いい加減な人間なら、いろいろあらあな、とばかり、他人の迷惑など平気で、世渡りをする。こういう時代、したたかで、しなやかでないと、生きてゆけない。
■ぎりぎろのところで生きている人も多いかと思いますが、しなやかに、したたかに、生きるべきです。まかりまちがっても、自分で命を絶つなどしてほしくないもの。大変紋切り型の言い方ですが――「どうせ死ぬのですから、急ぐ必要はありません。生きていればこそです」