コラム


by katorishu
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映画『靖国』、大阪ほかの都市では上映へ

 4月4日(金)
■東京で映画「靖国」の上映を決めていた映画館がすべて上映を中止にしたのに対し、大阪ほかの映画館が、上映に踏み切ったことで、ややほっとした。自由闊達にもののいえない社会は、この映画の上映に反対の組織や人たちが非難する北朝鮮や中国と似たものになってしまう。

■いつの時代にも、威嚇や力で、自分たちに「気にくわない」言論を封じ込めようとする人や組織は一定数いるものだ。今回、もっとも情けないと思ったのは、「圧力が予想され」「近隣に迷惑がおよぶかもしれない」として、上映を決めていながら、とりやめた東京の映画館主である。

■圧力に屈する映画館にたいし、1館くらいは「うちは上映する。なにより多くのお客様に見ていただきたいから」とでもいう映画館が出るかと思ったが、全館足並みそろえて「圧力」に屈するとは。
 そのひとつ銀座のシネパトスは小さな映画館がいくつか集まった「シネコン」で、昔ながらの古い飲屋街にあり、ときどき足を運ぶ。

■昭和天皇をあつかったソクーロフの『太陽』は、たしかここで見た。昭和天皇を、やや戯画的に描いているこの映画のほうが、いわゆる「右翼」の強い反発にあうのでは……と関係者は心配していたと聞く。
 その作品を敢えて上映した映画館が、今回は中止にするという。今回は中国人監督ということと、国会議員の試写という点が、上映中止に追い込む原因になったのか、と想像される。

■以前、千葉の図書館で「国粋的」と見られている評論家、西尾幹二氏の著書を図書館員が、確か率先して「廃棄処分」にしてしまったと記憶している。これも、今回のことと同様、やってはいけないことだ。独文学者である西尾氏の著書は数十年前から読んでおり、深い分析力をもっており、一家言あるひとと思っていた。『教科書をつくる会」に深くかかわるようになった氏に、むしろ奇異な印象をもったほどである。

■自分の気にいらない言論を封じ込め、多くの国民の目から遮断しようとする――ここには戦時中の「鬼畜米英」の潮流につながるものがある。(もっともインターネット時代、情報の遮断など出来ようはずもないが)

■ある種の宗教団体の構成員のように、「一色に染まる」のはいただけないし、それ以外の人を排除するような動きになったら、おぞましい。人間はもっと多種多様であり、美意識、価値観、趣味等々、異なるひとが多ければ多いほど、面白い。街でときどき見かける大音響を発する「街宣車」には、「知性」というものが感じられない。異なったものを異なったものとして認めるところに「知性」の土壌がある。

■同じ銀座の数寄屋橋で、昔、毎日のように赤尾敏愛国党党首が演説をぶっていて、「数寄屋橋名物」になっていた。赤尾敏の演説は、一流の芸人にも似て、なかなかユーモアもあり、面白く、「人間味」にあふれていた。あの界隈にいったときなど、何度も足をとめて聞き入ったものだ。
 今、人間味のない、人や組織等が跳梁跋扈しているようで、気になる。
by katorishu | 2008-04-04 15:15