コラム


by katorishu
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厭なものの流行、「硫化水素による自殺」

4月29日(火)
■硫化水素による自殺がふえている。インターネット上で、硫化水素を発生させ死ねる方法が具体的にイラスト入りで紹介されているが、その影響が大きい。試みにインターネット上を検索してみると、具体的に出ていた。材料はトイレの洗剤など簡単に手にはいるものである。

■「こうやったら死ねます」とイラストいりで、懇切丁寧にネット上に書き込んであるが、一体どのような人物がやっているのだろう。それなりの知識がありそうなので、化学や薬学を専攻した学生か、あるいはもっと年配の人間なのか。

■本気で自殺をしようと思えば、いくらでも方法はあるが、「流行」というのは怖い。新種の方法があれば「やってみるか」という人間も現れる。「生き甲斐」を失っている人が相当数いるようなので、今後も硫化水素で自殺を試みる人が続くに違いない。

■社会全体を「刹那主義」「ニヒリズム」の空気がおおっている証拠であり、これはいろいろな意味で危険な兆候である。ニヒリズムとは要するに、人間、いや地球などどうなってもいいということで、この世に存在するものに「価値」などないということだ。広辞苑をひくとみっつほど解説があるが、そのひとつは「伝統的な既成の秩序や価値を否定し、生存は無意味だとする態度」である。

■確かに、よくよく考えれば、そういう考えに行き着くこともわからなくもないが、なんの因果かたまたまこの世に生を受けたのである。「なにかの僥倖」だと考え、これを積極的に否定することもないと思うのだが。

■病気や経済面で追いつめられ、生きるのが苦しくて、はやく苦から逃れるため、自ら死を選ぶ人の気持ちは、わからなくもない。ぼく自身は自殺を本気で考えたことは一度もない。それなりに「苦労」や「苦悩」も多いが、多分「死んだ方が楽」という窮状に追いつめられたことがないからなのだろう。もっとも「窮状」にあっても、それをどこかで愉しんでいる人も稀にはいる。

■自らの命を絶つという選択は、ニヒリズムの「ささやかな実行」といっていいだろう。当人にとって命を絶つことは、この世の一切を「消す」こととに値するのだから。
 ところで、相変わらず自殺者の数が減らない。世界でも日本の「自殺率」は上位にランクされると記憶している。これはかなり「不幸な社会」「不幸な時代」というべきだろう。自殺を考えている人には「どうせ死ぬんだから、急ぐことはない」という俗耳にはいりやすい言葉を、送るしかない。

■それにしても、ウエブ上で懇切丁寧に自殺の方法を教示しているとは、かなり異様である。「多くの人に感動を与えること」に生き甲斐を見いだしているぼくのような職業の人間には、おぞましくも、醜悪で、理解に苦しむ。妙な社会になったものである。 
by katorishu | 2008-04-29 21:07