コラム


by katorishu
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映画『ぼくの大切なともだち』を見た

 7月21日(月)
■昨日、脳の疲れを癒すため、渋谷の文化村の映画館でフランス映画「ぼくの大切なともだち」を見た。『仕立て屋の恋』や『髪結いの亭主』など繊細な人間の心理を描くパトリス・ルコント監督作品なので期待して見た。

■「笑える」要素をもった作品ということで見たのだが、やや期待はずれ。「人生の半ばを過ぎた2人の男が、偶然の出会いをきっかけに、不器用ながらも友情を育んでいくハートウォーミング・ストーリー」ということで、確かにそのジャンルの作なのだが、最後にクイズ・ミリオネアのテレビ番組に異常にシャイな若い方の男がでて、100万ユーロを獲得する……という展開は、予定調和で先が読めてしまい、かえってはぐらかされた。

■ルコント監督ならではの冴えがあまり感じられなかった、とぼくは思う。映画館は日曜日のラストの回は1000円ということで、比較的若い層が多く、珍しく満席に近かったが。小劇場などで、ワケもなく笑う観客がいるが、その類の笑いが多く聞こえた。

■ハリウッド映画の、展開が早く感動をこれでもかと盛り上げる手法とはちがって、しみじみとした人生を描くことに力点を置いており、そこにフランス映画の存在理由があるのだが、前半の描写はいかにも退屈で、ストーリーを前に進める力が弱すぎる。ハリウッド映画の構造分析などを、次にだす本の中で試みており、こちらがハリウッド映画的思考にはまっているのかもしれないが。

■この映画、フランスで450万人の観客動員をしたというし、製作費も安かったにちがいなく、興行的には大成功なのだろう。2006年のフランスでの興行成績1位であるとのことだが、フランス人の感覚とどうもちがうな、と思ってしまう。深みがないというのが最大のマイナス点。『哀しみの乾くまで』のような佳品になかなかお目にかかれない。

■東京は30度をこえる日が10日連続つづいているという。本日も原稿の推敲でほとんどの時間がつぶれた。今年は2冊の本を刊行予定。あと1冊なんとか形にしたいと思っているのだが、なかなかこちらの希望と版元の希望が一致しない。
by katorishu | 2008-07-22 01:06 | 映画演劇