傷ましい限り、アフガンで殺害されたペシャワール会のメンバー
2008年 08月 27日
■アフガンで現地の農業生産や医療などで活動している「ペシャワール会」のメンバーが、タリバンらしいグループに拉致され、死体となって発見された。一時は釈放されたとのニュースも流れたのだが、誤報であり、もっとも悲しい姿となって発見された。こういう事件に接すると言葉もない。
■殺された伊藤氏は「現地の人を助ける」のではなく「現地の人ともに汗を流す」とよくいっていたとのことで、現地の人間になりきって、農業生産をあげることに生き甲斐を見いだし、がんばっていた。自己中心で自分だけがよければよい、という風潮が支配的な現在、伊藤氏のような存在は大変貴重であり、それだけに彼のような有為の人間を殺害した人やグループを許せない。
■ペシャワール会の中村哲代表は、これによってプロジェクトがとまることはない、と語っていたが、こういうNGOの活動には本当に頭がさがる。国民栄誉賞などは、こういう人にこそさしあげるべきである。ペシャワール会は会費と寄付だけで運営しており、政府から援助をうけていない。それがまた、現地での信用獲得にもなっており、ペシャワール会の人間は攻撃するな、とタリバン関係者にも伝わっているはずとのことであった。それが、悲しい事態になってしまった。
■アフガン情勢は最近、一段と悪化し、アメリカもすでに力ではおさえきれなくなっているようだ。遠因は1980年のソ連によるアフガン侵攻だが、9,11後のアメリカの軍事介入も、治安の悪化を加速しただけだった。現在、解決とはほど遠い情勢になっている。では、どういう解決法があるのか。わからない。有効な解決法があれば、とっくに関係当事国がやっている。
■アフガンの現政府の「腐敗」が指摘されており隣国パキスタン情勢もきわめて不安定になっている。さらにグルジアをめぐるロシアの圧力も強化され、中東から中央アジアにかけて、きな臭いものがたちこめはじめた。新たな「冷戦」が始まったという説もあり、世界的な経済停滞もくわわり、世界はただならぬ気配になってきた。
■こういうときこそ、日本外交の見せ場だと思うのだが、外務省も大臣クラスの人間もあまり積極的に解決への動きを見せていない。ここらで日本の存在価値を世界に大きくアピールしておかないと、日本の「地盤沈下」はとまらない。
一方で、今後日本が世界に向けて重点策として力をいれるべきは「ソフトパワー」ではないかと思う。文化芸術などの面で、「世界モデル」や「世界に通用する作品」をつくりだすことである。たとえば映画やテレビドラマ作品。ハリウッド映画には太刀打ちできな、と最初からあきらめる前に、国としても映像作品の振興にもっと力をいれて、有為の才能をあつめれば、相当のことができるはず。
■たとえば自動車産業。昭和30年代ごろまで、日米の自動車産業は天と地ほどの開きがあった。が、その後の官民あげての努力で、日米が逆転するほどになった。昭和30年代ごろまでの日本人の何人が、今日の自動車産業の隆盛を予想したであろうか。やる気のある人材を育てる環境作りこそ、今の日本に必要なことはない。