化学部門でもノーベル賞受賞、日本の進むべき道が見えてきた
2008年 10月 10日
■3人の日本人に物理学部門でノーベル賞が授与されたのに続いて化学部門でも受賞者をだし、暗いニュースがつづくなか、ほっと明るい気分になる。
地味な場所でこつこつ積み上げてきたことが、顕彰されるのは素晴らしいことだ。受賞者のいずれもが謙虚で、恥ずかしがり屋の一面をのぞかせているのも、好感がもてる。
■「俺が俺が」「自分が」と他をおしのけても、しゃしゃり出る人が多い中、さわやかな風に接する思いである。4人に共通するのは、ある種の「職人気質」である。自分の仕事はどこかで社会に役立っているのだと信じて、日々、愚直に「仕事」を積み上げていく。そんな良い意味での「職人気質」が失われて久しい。
■ノーベル賞の受賞がきっかけとなり、そんな「職人肌」で物事にむかう人が増えることを期待したいものだ。敗戦でうちひしがれていた昭和20年代、湯川秀樹博士のノーベル賞受賞がどれほど国民を勇気づけたか。それと「フジヤマの飛び魚」と称された水泳自由形の古橋広之進氏が、相次いで世界記録を更新したこと。この2人が青少年にあたえた「勇気づけ」は計り知れない。
■学生の理系離れが進んでいると伝えられるなか、それに歯止めがかかるのではないか、と期待を抱かせる。今後、日本が世界で存在感をしめすのは、「物作り」であり、そのための地道な基礎研究が大事である。それと、芸術・文化で秀作、傑作を作り出すこと。このふたつの領域に国民の英知を結集させていけば、まだまだ日本は捨てたものではない。
この両輪をないがしろにしたら、明日の日本はない。日本の進むべき道が見えてきたと改めて思ったことだった。