コラム


by katorishu
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グリーンスパン元FRB議長、今更「間違っていた」といっても手遅れである

 10月24日(金)
■本日、夕刊のトップ記事は株価急落について。東京証券取引所の株価が7649円で取引を終えた。大変な暴落というべきだろう。一年前、株価の総計は503兆円あった。それが本日は258兆円になった。一年で半分になったということである。これでとどまってくれるといいのだが、まだわからないということが、怖い。

■すでに「世界大恐慌」にはいったというべきだろうが、アメリカのグリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長が、下院政府改革委員会で開かれた公聴会で、低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローン問題に端を発した金融危機に関連し、融資監督で議長時代に「過ちを犯した」と語り、政策運営のミスを認めた。(時事通信)。
 18年間にわたってFRBをひきいて「マエストロ(巨匠)」などといってもてはやされた人だが、とんでもない事態をまねいた「当事者」といっていいだろう。

■ワックスマン委員長(民主)が「サブプライム融資を過熱させた無責任な慣行を止める権限が当時のFRBにあったのでは」などと追及したのに対し、前議長は「(規制よりも)金融機関の自己利益追求が、(結果として)株主や株主資本を最大限に守ることになると考えた。過ちを犯した」と答えたという。
 いまさら謝ってもらっても困る、いったいどういう責任をとるんだ、と思っている人は多いはずである。

■「金融工学」というマジックでバブルをあおり、結局は破綻に追い込んだのである。地に足をつけて汗水ながして働く――という人間が長年かけてつなげてきた「伝統」を破壊したところからは何も生まれない、ということが、改めて証明されたということである。

■金融関係者が破綻するのは自業自得だが、実態経済にまで深刻な影響をおよぼしているので、他人事ではない。質素に地味に人に迷惑をかけないで生きようとしている人たちにも、世界的な株価の下落の波は容赦なく襲いかかる。
 よほど経済に強いリーダーがリーダーシップを発揮しなければいけないのだが、総選挙での当選しか頭にない政治家が大半の日本。打つ手が後手後手にまわったら、日本もアメリカと一緒に沈没してしまう。

■ブッシュ政権も最後を迎えるが、この政権のやったことは、いったいなんだったのか。イラク戦争を起こして「テロ」を拡散し、世界的な経済危機をもたらして多くの人間を不幸にしただけではないのか。ブッシュ政権に全面的に追従し「改革、改革」と叫んでいた連中は今、沈黙をまもっている。ソ連崩壊のあと、「マルクス経済学者」やいわゆる「左翼」が沈黙を守ったことを、想起させる。

■率直にって、第二次大戦後の世界をリードしてきた米ソのふたつの「帝国」が崩壊した、ということである。アメリカそのものはしぶとく生き残るであろうが、「アメリカ式の金融原理主義」は終わりである。「産業革命」以来、アングロ・サクソンの主導で動かしてきた世界が、今大きな変わり目に来ているといっていいだろう。まだまだ大変不幸な事態がやってくる可能性が強いが、これを乗り越えるところから、日本は本当の意味で「戦後(アメリカ占領政策)」から脱却できるのではないか。

■江戸時代の、環境と調和して生きる文化――これを基軸に独自の「日本スタイル」を構築して、世界の中で「名誉ある位置」をしめたいものだ――と口でいうのは簡単だが、さてこの大津波からどうやって身を守るか。「津波」の規模がまだ見えていないので、不安が増幅される。みんなが一斉に財布のひもを締めてしまうと、社会の血液である「金」がまわらなくなり、社会は壊死に近い状態になってしまう。嫌な時代がやってきたものである。
by katorishu | 2008-10-24 22:40