コラム


by katorishu
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読書こそ人を賢くさせる最良の方法である 

11月30日(日)
■今年も残り1ヶ月となってしまった。今年を総括するのはまだ早いが、物書きとして今年はじつによく仕事をし、ぼくとしては「世に誇れる仕事」のはずであったのだが、その多くは暗礁にのりあげている。金銭的なことが最大の理由だが、それとは関係ないこともあり、気が滅入る。

■「オプチミストは成功する」という言葉があるが、めげないことが案外大事なのかもしれない。ひところ私淑した作家、吉行淳之介は作家でありつづけるためには3つの条件が必要だとエッセーに書いていた。ひとつは「才」で、ひとつは「運」、そうしてもうひとつは「鈍」であると。もしかしてもっとも必要なのは「鈍」かもしれない、と「才」にも「運」にも恵まれた吉行淳之介が記していた。

■ひところ文壇に強い影響力をもち、吉行ファンも多かったのだが、20年ほど前に亡くなったあと、吉行淳之介の名をあまり聞かない。今の若い人は文学好きな人でも、吉行淳之介のことを知らないか、知っていても作品を読んでいないのではないか。

■過日、高校の同窓会で、Nくんが「香取の本はだいたい読んでいるけど、あんたは吉行淳之介の影響を受けているな」といった。「驚いた。よくわかったね」とぼくはいい、Nくんの慧眼と眼力、豊かな読書体験に感嘆した。以前はみんなよく読書をしていた。最近も大学時代の同級生で某大手商社に勤務していたYくんが拙作「北京の檻」を非常に面白く読んだとメールをくれた。10月にあったとき、こういう本を出している、中国貿易に関係していた人には興味深いと思う、とは話したので、その後、読んでくれたのである。知り合いや後輩にぜひ読むようにすすめる、と記されていた。

■読書が今ほど大事なときはない。読書をせず漫画しか読まない人がどういう言動をしているか、国の最高指導者の言動が見事証明してくれている。「はじめに言葉ありき」といわれるが、人間が動物と分岐した重要なポイントは言語を獲得したことである。はじめに絵ありきでは、想像力が働かない。はじめに言葉ありき。今ほどこの言葉が重要なときはない。
by katorishu | 2008-11-30 23:27 | 文化一般