今更遅いブッシュの反省
2008年 12月 04日
■ブッシュ大統領が、アメリカABCテレビの番組で、「最大の痛恨事は、イラクに関する情報の誤りだった」と反省の弁を語ったという。イラク戦争に踏み切る理由となった大量破壊兵器が存在しなかったことを悔やんだというのだが、お粗末なことである。現在、世界経済を混乱に陥れている金融危機についても「申し訳ない」と語ったそうだ。
■驕り高ぶった指導者ほど危険な存在はない。世界経済をメチャクチャにして、多くの人間を不幸にした「愚かな指導者」としてブッシュは世界の歴史に記録されるに違いない。イラク戦争で費やした膨大な戦費(いまも浪費しつづけている)が、アメリカ経済をゆがめたはずで、「アメリカの没落」を招いた。アメリカだけが没落するのなら勝手ともいえるが、グローバリゼーション(世界のアメリカ化)によって世界を巻き込むシステムをつくりだした結果、自国だけではなく世界をも道連れにしようとしている。
■アメリカべったりの日本は、今後、アメリカの没落に歩調をあわせて、沈む可能性が強い。「アメリカべったり」は指導者だけの問題ではない。物心ついたときから「勝者の奢り」をふんだんに漂わせる「アメリカ」を身近に見てきたぼくなどから見たら、「アメリカ式ライフスタイル」や「アメリカ崇拝文化」を甘受している多くの日本人は「異常」としか見えない。
■「アメリカ的なるもの」とはかなり距離を置いて生きてきたつもりでも、じつは自分自身が「アメリカスタイル」の生き方に慣れてしまっている。ただ、食べ物ひとつとっても、ぼくは「和食」しか基本的に食べないし、ハンバーガーの類は一切たべない。食卓も椅子式ではない。寝るのも畳に布団である……等々、「和式」を小さなところで貫いている。
といって、こうしてパソコンでものを書いたりするときは椅子に座り、アメリカが発祥の地であるパソコンやインターネットを使っているのであるが。
■なにより大事にしたいのは日本語である。過去何度も繰り返しいっているが、まっとうな日本語の読み書き能力のできる人が多くいる限り「日本文化」は滅びない。日本文化とは日本語と置き換えてもいいくらいだ。ただ、日本語の駆使能力に問題がありそうな最高指導者がでてきているように、この20年ほど日本語の読み書き、表現能力がひどく劣化してきている。「国際化」に対応しなければと、小学生から英語を習わせる親がいるが、愚の骨頂である。子供にとってまず大事なのは「国語力」の涵養である。
■ものを考えるのは言語によって行っているので、言語駆使力(国語力)が弱かったら、考える能力も育たない。不景気で金がないのなら、あまった時間をぜひ読書、それも骨のある本を読むことに費やして欲しいものだ。日本人は世界でも希にみる「読書好き」の国民で、だからこそ「奇蹟の発展」もとげたし、独自の文化を築いてもきた――と「過去形」でしか記せないのが悲しい。
■このへんに今の日本の不幸の根っこがある。昔、池田勇人首相(当時は大蔵大臣)は「貧乏人は麦飯を食え」といった。今あえていいたい。「貧乏人は読書をするといい」。そこから「日本」の再生がはじまるのではないか。と宣う自分自身、いつも枕元に数十冊の本をつみあげてあるのだが、なかなか読み切れない。
本日も渋谷で脚本の打ち合わせ。テレビ界の窮状、惨状に話がいってしまう。「もう、駄目だねテレビは」という某氏の声が「もう、駄目だね日本は」と聞こえてしまう。